システム戦略 - 17.システム戦略 - 1.情報システム戦略 - 1.情報システム戦略

Last Update : April 12 2021 22:26:26

     

a. 情報システム戦略の目的と考え方

経営戦略の実現を目的に、情報システムを構築するための戦略を「情報システム戦略」と呼ぶ。 情報システム戦略では、むやみにシステム化すればよいというものではなく、業務の現状を正しく把握して経営戦略の実現のために最適な情報システムを導入することが重要となります。正しい判断により最適な情報システム化が図れれば「業務の効率化」「業務支援」といったメリットが得られる。情報システム戦略が経営戦略と整合的に実現されているかどうかを継続的に評価することが重要(情報システム戦略評価)


b. 情報システム戦略の策定手順
  1. 経営戦略の確認
    経営理念・経営方針を理解する。
    中期・長期目標を理解する。
    経営戦略を理解する。
    ビジネスモデルを理解する。
    ビジネスプロセスを理解する。
  2. 業務環境の調査、分析
    現行業務や現行システムと経営戦略のギャップを明確にする。
    上記ギャップに対して業務改革案・業務改善案を検討する。
  3. 業務、情報システム、情報技術の調査、分析
    業務改革案・業務改善案の中からシステム化すべきものを抽出する。
    新しい業務フローを作成し、現行の業務フローと比較する。
    システム化によって業務と情報システムがどのように変化するのかを把握する。
  4. 基本戦略の策定
    システム化要件を導出する。
    システム化要件に優先順位をつける。
    優先順位付けは、外部環境への適応度、中期・長期目標達成への貢献度、費用対効果に基づいて行う。
  5. 業務の新イメージ作成
  6. 対象の選定と投資目標の策定
    システム化要件に対して必要となる資源やコスト、リスク等を調査する。
    システム化要件を優先順位・資源・コスト・リスク等に基づいて取捨選択し、投資対象を選定する。
  7. 情報システム戦略案の策定
    システム化の目標を設定する。
  8. 情報システム戦略の承認
    情報戦略を文書化し、最高責任者の承認を得る。

c. 情報システム戦略遂行のための組織形態

d. 全体システム化計画

情報システムに対するニーズは部門や利用者ごとに異なることが多い、そのため、個別にシステム化を行っていくと、組織全体としては効率や整合性の悪いシステムになってしまう。
また、情報システムの人員にも限りがあるので、個別のシステムそれぞれに対応することには限界がある。
そのため、システム化については、全体最適化目標を設定し、全体システム化計画により組織全体で考慮していくことが重要。これを全体最適化方針という。

経営戦略と情報システム戦略に基づいて、情報システムのあるべき姿(To-beモデル)を検討する。


d. 全体最適化計画

全体最適化方針に基づき、全体最適化計画を策定する。全体最適化計画は、より具体的な計画で、システム構築・運用のための標準化方針及び品質方針を策定し、これをもとにシステム管理基準を作成する。


e. 情報システム投資計画

システム開発では多くの費用と時間がかかる、そのため費用対効果を考慮して、情報化投資方針に基づき情報化投資計画を策定することが重要。


f. 個別の開発計画(個別計画)

1. 基幹系システム
日常の業務を処理するためのシステムで、業務系システムとも呼ばれる。

ERP 】(Enterprise Resource Planning)
ERP は、エンタープライズリソースプランニングのことで、「企業資源管理」とも言い、経理、生産管理、販売管理、人事管理などの基幹業務をコンピュータシステムを使用して一元管理することを言います。これにより全社的に最適化された企業活動が可能になるとされています。
これを情報システムとして実現したものが、ERPパッケージです。 ERPパッケージは、財務会計や人事管理、生産管理や在庫管理など、企業活動全体にわたるの業務処理を統合したソフトウェアです。導入により、情報の統合・共有による業務の効率化、全社的な経営資源情報を得ることによる経営判断の迅速化、といった効果が期待できます。また、パッケージソフトウェアであるため、システム開発や保守コストの低減、業務の標準化といった効果も期待できます。

SCM 】(Supply Chain Management)
供給業者から最終消費者までの業界の流れを統合的に見直し、プロセス全体の効率化と最適化を実現するための経営管理手法。
開発、調達、製造、発送、販売といった各プロセスでの在庫量や滞留時間などを削減することで、顧客には最短かつタイムリーに製品を供給し、また、業界全体としてはリードタイムの縮小、在庫の縮小、設備の稼働率向上などによるコスト削減、経営の効率化を目指す。
具体的には、小売店でのPOS入力や、営業担当者の報告などの販売・受注実績から需要予測をして、発注、生産、出荷・物流、販売などの計画を最適化する。その内容に従って生産、購買、物流を実施する。

CRM 】(Customer Relationship Management)
情報システムを応用して企業が顧客と長期的な関係を築く手法のこと。
詳細な顧客データベースを元に、商品の売買から保守サービス、問い合わせやクレームへの対応など、個々の顧客とのすべてのやり取りを一貫して管理することにより実現する。顧客のニーズにきめ細かく対応することで、顧客の利便性と満足度を高め、顧客を常連客として囲い込んで収益率の極大化をはかることを目的としている。

SFA 】(Sales Force Automation)
IT技術を用いて営業部隊の生産性向上、効率化を進めること。またそれを実現するための情報システムを指す。
SFAには以下のような機能がある

  • コンタクト管理機能
    「いつ」「どこで」「だれが」「どういう内容で」連絡を取ったり、訪問したりといった履歴を記録し、その後の顧客対応に活用すること。
  • マーケティング機能
    一元管理された顧客データベースを利用し、顧客リストを分析して見込み客や優良顧客を抽出する
  • チームセリング機能
    情報を共有することで、営業部門全体で顧客に対して戦略的な活動を行う


2. 情報系システム
経営意思決定のためのシステムで、意思決定支援システムとも呼ばれる。

経営情報システム 】(MIS:Management Information Systems)
経営のための意思決定を行うために, 定期的に報告書の形で, 経営組織内の内部のデータをまとめて報告するというシステム。

意思決定支援システム 】(DSS:Decision Support Systems)
非定形の問題に対して、意思決定者が対話的にデータやモデルを操作して情報を獲得し, 意思決定支援を行うことを狙った情報システム

経営者情報システム 】(EIS:Executive Information Systems)
経営者に対して、さまざまな意思決定に必要なデータや情報を提供するシステム。 経営者の意思決定では、企業内情報(内部情報)より、業界の情報や環境情報(外部情報)の比率が高くなる。

KMS 】(Knowledge Management System)
知識管理システムと呼ばれる。
ナレッジ・マネジメント・システムとは、「同じような関心とニーズを持つ人々や組織で構成されるコミュニティの中で(あるいはそうしたコミュニティ間で)、価値ある情報や専門知識、洞察などを生み出し、保管し、共有するためのサポート・システムである」と定義づけられている。
企業の独自技術・知識を管理・活用するためのインフラとなる。
具体的なツールとしては、ドキュメント管理や、掲示板などのコミュニティ活動支援機能を併せ持つグループウェアが代表的な例として挙げられる。


g. モデル

企業活動のさまざまな事柄をすべて考慮しながら問題解決していくのは難しいため、本来のあるべき姿を抽象化したものを目標として、問題解決していく手法をモデル思考という。

ビジネスモデル
ビジネスとしての本来の仕組みを抽象的に定義したもの

業務モデル
企業が行っている業務の仕組みを抽象的に定義したもの

情報システムモデル
ITを使用した業務の仕組みを抽象的に定義したもの


  [ 例題 ] 
  1. 平成29年度秋期 問69  サプライチェーンマネジメント
  2. 平成28年度春期 問63  情報戦略策定
  3. 平成28年度秋期 問69  CRM
  4. 平成25年度春期 問70  サプライチェーンマネジメント
  5. 平成24年度春期 問62  情報技術
  6. 平成24年度春期 問65  サプライチェーンマネジメント
  7. 平成24年度秋期 問70  CRM
  8. 平成23年度春期 問68  SFA
  9. 平成22年度秋期 問70  サプライチェーンマネジメント
  10. 平成21年度春期 問63  業務改善


     

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