コンピュータシステム - 4.システム構成要素 - 1.システムの構成 - 2.システム構成

Last Update : April 13 2021 13:08:48

     

a. 信頼性を考慮したシステム

シンプレックスシステム
オンライン処理で予備機を持たないCPU1個の構成。処理能力や障害に対する信頼性は劣るが、経済的。



デュアルシステム
オンライン処理で機器構成を二重化したシステム。2つのCPUで同じ処理を行う。2系統のシステムで行い処理結果をクロスチェックしながら処理を進める。1つが故障した場合は、CPUを切り離しもう一方で処理を行う。信頼性が高いが、高価。



デュプレックスシステム
システムは2系統であるが、一方が主系(現用系)としてオンライン処理用、もう一方を従系(待機系)としてバッチ処理などに利用する。信頼性はデュアルシステムより低いが、コスト面では有利。




  • ホットスタンバイ
    待機系でも現用系と同じシステムを起動しておき、現用系が故障した場合は、すぐに待機系に切り替える。
  • コールドスタンバイ
    待機系ではバッチ処理などの別の処理を行っているが、現用系が故障した場合は、現在のシステムを現用系と同じシステムに入れ替えて、現用系の代わりとして利用するシステム。
    待機系を切り替えるのに時間がかかる。

バックアップサイト
システムが稼働不能になるといった不測の事態に備えておくための機器や場所のこと。障害・災害からの復旧で最も重要となる側面のひとつが復旧作業を行なうための場所を確保することです。この場所はバックアップサイトと呼ばれています。災害発生時には、バックアップサイトにデータセンターが再構築され、災害が納まるまでここからオペレーションを行う。

  • コールドバックアップサイト
    コールドバックアップサイトは建物内に設けたスペース程度のことになる。ユーザーにサービスを復元するのに要するすべてのものは復旧プロセスが開始される前に入手してこのサイトに送られる必要がある。
  • ウォームバックアップサイト
    ウォームバックアップサイトには常に、データセンターにあるファックスなどに相当するような適度なハードウェアが備えてある。サービスを復元するためには、オフサイトストレージからの最終バックアップが送られベアメタルの復元を完了する必要がある。それから実質作業の復元を開始することができる。
    ※ベアメタル回復とは、まっさらな状態のHDDから、システム復旧を行うこと。システムの初期状態からリカバリする処理
  • ホットバックアップサイト
    ホットバックアップサイトには現在のデータセンターの各種ミラーイメージがあり、すべてのシステムが設定済みでオフサイトストレージからのユーザーデータの最終バックアップを待っているだけの状態。ホットバックアップサイトでは多くの場合、数時間以内に完全な実稼働環境を取り戻すことができる。

バックアップサイトの種類と特徴

名称費用ハードウェア機器の有無通信機器の有無稼動開始準備時間場所
コールドサイト固定
ウォームサイト部分的に有部分的~全て有固定
ホットサイト中~高全て有全て有固定
モバイルサイト場合による場合による場合による非固定
ミラーサイト全て有全て有固定


b. 処理効率を考慮したシステム

マルチプロセッサシステム
複数のCPUを同時に使用して、システム全体の処理能力と耐障害性を高めたシステム

  • SMP [Symmetric Multiple Processor] (対称型マルチプロセッサ)
    全てのCPUに対して対称的、均一的に処理が割り付けられた複数プロセッサによる並列処理方式のことを言う。
  • ASMP [Asymmetric Multiple Processor](非対称型マルチプロセッサ)
    処理装置ごとに役割分担が決まっている非対称的。
  • 密結合マルチプロセッサシステム(TCMP:Tightly Coupled Multiprocessor)
    主記憶を共有しながら同一のOSで制御されるもの。
    複数のプロセッサが主記憶やディスクなどの資源を共有し、互いに連絡をとりながら1つのOSによって制御されるマルチプロセッサシステムのこと。

  • 疎結合マルチプロセッサシステム(LCMP:Loosely Coupled Multiprocessor)
    複数のコンピュータシステムが別々のOSで制御されるもの。
    主記憶やディスクなどを個別に持つ複数のプロセッサが独立して動作し、プロセッサごとに存在するOSによって制御されるマルチプロセッサシステムのこと

タンデムシステム
複数の機能の異なる専用のプロセッサを直列に接続した形態。
メッセージ処理専用のフロントエンドプロセッサ(FEP)、データベース管理専用のバックエンドプロセッサ(BEP)などから構成されている。

ロードシェアリングシステム
負荷分散システムのこと。
複数の処理装置、記憶装置を持ち、処理を各処理装置に割り当てる。負加を分散する。複数の機器を有し、オンライン処理やバッチ処理などを行う。
オンライン処理が集中したときには、全系列でオンライン処理を行い負荷を分散させる。

クラスタリング
複数の独立したコンピュータを相互接続し、全体として1台のコンピュータのように動作するシステムをクラスタリングという。このシステムは疎結合マルチプロセッサシステムと見ることが出来る。
システムの一部に障害が生じてもシステム全体はダウンしない高い信頼性を実現するためのシステムであるので、大規模なサーバのシステムに用いられる。

グリッド・コンピューティング
インターネットなどの広域のネットワーク上にあるコンピュータ資源(CPUなどの計算能力や、ハードディスクなどの情報格納領域)を結びつけ、ひとつの複合したコンピュータシステムとしてサービスを提供する仕組みである。提供されるサービスは主に計算処理とデータの保存・利用に大別される。一箇所の計算センターや、一組のスーパーコンピュータでは足りないほどの大規模な計算処理や大量のデータを保存・利用するための手段として開発されている。

ピアツーピア
接続されたコンピュータ間に上下関係が存在しないネットワークの形態。サーバ機とクライアント機の区別がなく、すべてのコンピュータがサーバとしてもクライアントとしても機能する。専用サーバ機を必要としないため費用も安価に済むことから、小規模なLANでファイルやプリンタを接続するのに向いている。

仮想化
1台のサーバコンピュータをあたかも複数台のコンピュータであるかのように論理的に分割し、それぞれに別のOSやアプリケーションソフトを動作させる「サーバ仮想化」や、複数のディスクをあたかも1台のディスクであるかのように扱い、大容量のデータを一括して保存したり耐障害性を高めたりする「ストレージ仮想化」などの技術がある。
仮想化技術を用いて複数のコンポーネントを束ねることで、ITリソースを「仮想リソース・プール」として共有できるようになれば、ピーク時の処理をほかのシステムに分散させることが可能になる。システムは、このプールから最適なリソースの提供を受け、利用することになるからだ。負荷変動に備えた余剰リソースは、複数のシステムで共有することで最小限に抑えることができる。このように仮想化技術を用いて、ITリソースの総量の全体を最適化することで、リソースの利用効率を最大限に高められるメリットがある。

  • ホスト OS 型
    普通のコンピュータと同様に OS(ホスト OS)上のアプリケーションとして仮想化ツールを導入し、そのツール上に仮想OS(ゲストOS)を導入するタイプである。フル機能のOSを二重に導入するためのオーバーヘッドはあるが、既存環境に後から手軽に導入できることからデスクトップでの開発環境やOSを切り替えての利用などで広く利用されている。商用ではVMware社のVMware Workstation やオープンソースでは Sun Microsystems 社の VirtualBox がある。
  • ハイパーバイザー型
    ハードウェアと OS の間に仮想マシンソフトウェアを導入し、ホスト OS 型に比べて効率化を図ったタイプである。この仮想マシンソフトウェア上に最小限の機能に限定された管理用 OS とゲストOS が搭載される。また、仮想化手法によって、準仮想化と完全仮想化がある。完全仮想化ではハードウェアを完全にエミュレーションすることでゲスト OS を変更無しに導入できる。一方、準仮想化では効率的なエミュレーションを実現できる仮想マシン環境に対してゲスト OS を導入する。このため仮想マシンにあわせたゲスト OS の変更が必要だが、性能面で大きなメリットがある。商用では、VMware 社の Infrastructure やオープンソースでは、Xen がある。

VDI 】(Virtual Desktop Infrastructure:仮想デスクトップ)
ローカル端末(シンクライアント)内にOSやアプリケーションをおかず、これらをサーバー上で一元管理し、リモートから操作できることが特徴といえます。
シンクライアントで環境を構築するには、2つのパターンがあります。
●ネットワークブート型
ネットワークブート型は、クライアント端末がサーバーに接続した際に、あらかじめ設定されたイメージファイルが端末にダウンロード、インストールされて、アプリケーションなどの実行はクライアント側の処理能力を使用する方法だ。
ネットワークブート型は、常に真新しい環境がユーザーに提供されるので、ルーティンワークを行うような場合やユーザー毎に環境のカスタマイズが必要無い場合に有効だ。クライアント側にはデータの保存がされないので情報漏洩のリスクも低減される。
●画面転送型とは
画面転送型は、すべての処理をサーバー側で行い、クライアント側は、その結果を画面出力する形式だ。サーバー側の処理能力を使用してアプリケーションを実行するため、ワークステーションクラスの処理をモバイル性の高いノートブックPCで実行することもできる。
もちろん、クライアント側は画面だけしか表示しないので、端末を紛失したり盗難にあってもデータが漏出することを防ぐことができる。

エッジコンピューティング
エッジコンピューティングの特徴は分散処理能力にあるとされています。エッジコンピューティングではデータを遠く離れたデータセンターへと送信しません。そのデバイス自体、またはデバイスに近い場所にあるコンピューターまたはサーバーでデータを処理します。こうすることにより、負荷を分散し、通信の遅延を限りなく小さくすることを目的としています。
エッジコンピューティングの「エッジ」とは、コンピューターネットワークの端(はじ)や縁(へり)を意味します。ネットワークの中央がデータセンターのようなクラウドだとすると、エッジ(端)にあるのはスマートフォンやタブレットのようなインターネットに接続しているIoT機器です。こういったエッジ(端)に近い場所でデータの処理を行うことで、ネットワーク経路やデータセンターに負荷が集中するのを防ぎます。これにより遅延が少なくなり、データを処理する上でより効率を高めることができるのです。
エッジコンピューティングでは、全てのデータをオンプレミスで処理するわけではありません。エッジ側でやれることと、クラウドに送った方がよいものを分けることによって、それぞれのメリットを最大限に活かす、使い分けをするのが最大の目的です。
大量のデータを的確に処理しなければならないときや、よりリアルタイム性の求められる情報はエッジ側、つまりオンプレミスで行います。一方、大規模な連携や集約が必要な情報や、処理速度の影響が少ない情報はクラウドで行うことで、データの管理にメリットが生まれます。こういった「情報をどこで処理するかの役割分担を的確に行う」のが、エッジコンピューティングの本来の姿だといえます。

クラウドコンピューティング
インターネット上にグローバルに拡散したコンピューティングリソースを使って、ユーザーに情報サービスやアプリケーションサービスを提供するという、コンピュータ構成・利用に関するコンセプトのこと。
インターネット上の“どこか”にあるハードウェアリソース、ソフトウェアリソース、データリソースをユーザーがその所在や内部構造を意識することなく利用できる環境、ないしその利用スタイルを「クラウドコンピューティング」という。

SaaS (Software as a Service)
ソフトウェアを提供する
ソフトウェアの機能のうち、ユーザが必要とするものだけをサービスとして配布し利用できるようにしたソフトウェアの配布形態。サービス型ソフトウェアとも呼ばれる。

PaaS(Platform as a Service)
プラットフォームを提供する
 ソフトウェアを開発・実行するプラットフォームをネットワークサービスとして提供するソフトウェア・デリバリモデルのこと。完成品としてのソフトウェアのみならず、それを作って動かす環境ごと、ネットワーク経由で提供する。

IaaS(Infrastructure as a Service)
コンピュータ環境を提供
コンピュータシステムを構築および稼動させるための基盤(仮想マシンやネットワークなどのインフラ)そのものを、インターネット経由のサービスとして提供する。

DaaS (Development as a Service)
開発環境を提供する
インターネット経由で、アプリケーション開発環境を提供するサービスのこと。現在では、PaaSということが多い。

DaaS (Desktop as a Service)
デスクトップ環境を提供する
ネットワークやそのほかの方法を使って、クライアントユーザー向けに仮想デスクトップ環境を配備する技術、スタイル、ないしサービスのこと。

FaaS (Function as a Service)
FaaSとは、サーバレスの状態でアプリケーションの開発が可能となるサービスのことを意味します。
サーバーレスといっても実際にサーバーがないとアプリケーションは動きません。サーバーレスの意味は、面倒なサーバーの管理やアプリケーションの実行に必要なサーバ環境の設定が必要ないということ。
必要なサーバなどのインフラはクラウドに管理を任せ、データベース、メッセージング、認証など、開発に必要な機能がサービスとして提供されるのが一般的で、開発者はプログラミングに専念できるようになります。
使う側は、作りたいアプリケーションに集中して作成することができる環境であるということ。
FaaSのメリット
・開発者の生産性の向上と開発時間の短縮(イベントドリブン)
・サーバー管理が不要
・スケーリングが容易、水平方向のスケーリングはプラットフォームが管理(オートスケーリング)
・必要なときのみリソースを購入または使用
・機能はほぼあらゆるプログラミング言語で作成可能
FaaSを使うのメリットは、コストの削減、スケーラビリティの確保、インフラの運用管理を不要にすることです。マイクロサービスとも相性が良く、それを実現する手段としても注目されています。

マイグレーション
プログラムやデータ、OSなどの環境やプラットフォームを移行、変換すること。

ライブマイグレーション
あるコンピュータ上で動作している仮想マシン(VM)を、その上で稼働中のソフトウェアを実行状態に置いたまま丸ごと別のコンピュータに移動すること。ソフトウェアを停止せずにハードウェアのメンテナンスや入れ替え、構成の変更などに柔軟に対応することができる。
ライブマイグレーションを行なうと、仮想マシン上のメモリイメージを丸ごと別の新しいコンピュータ上の仮想マシンに移し替え、稼働中のOSやアプリケーションソフト、ネットワーク接続などを一切停止・切断させることなく新しいコンピュータ上で動作を継続することができる。


  [ 例題 ] 
  1. 平成29年度秋期 問13  デュアルシステム
  2. 平成28年度春期 問41  SaaS
  3. 平成28年度秋期 問14  ホットスタンバイ
  4. 平成26年度秋期 問13  ホットサイト
  5. 平成24年度春期 問15  クラウドコンピューティング
  6. 平成24年度秋期 問14  デュアルシステム
  7. 平成23年度春期 問15  密結合マルチプロセッサ
  8. 平成23年度秋期 問15  システム構成
  9. 平成21年度秋期 問15  ホットスタンバイ
  10. 平成20年度春期 問31  待機系


     

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