技術要素 - 10.ネットワーク - 2.データ通信と制御 - 4.伝送制御

Last Update : April 14 2021 15:20:31

     

a. 伝送制御

伝送路を使って2点間でデータを伝送するには、双方が同じ制御方法でデータの送受信をする必要がある。
伝送制御の段階(フェーズ)

  1. 回線の接続
    相手と接続されていないとき、ダイアリングにより物理的に回線を接続する。
  2. データリンクの確立
    送信側と受信側の間で確実にデータの送受信ができるように、ポーリング・セレティング方式やコンテンション方式により論理的に接続できる状態にする。
  3. データの伝送
    同期をとりながら、またデータの誤りを検出・訂正しながらデータの転送をおこなう。
  4. データリンクの解放
    データの転送を終了し、回線の論理的接続を解除。
  5. 回線の切断
    交換回線の場合、(ダイアリング接続を)物理的に回線を切断。

回線制御
回線交換網を利用した通信を行うときに、回線の切り替えを制御する。

データリンク制御
通信回線が接続され、相手との通信が可能になっている経路をデータリンクという。データリンク制御では、回線の接続と相手の確認によりデータリンクを確立し、データ伝送の終了後にデータリンクを開放する。

  • コネクション方式
    データリンクを確立してからデータを送受信する方式
    通信の開始・終了のたびに相手先端末との間でリンクの設定・開放するための手続きが必要になる。
    通信ごとの送信確認や順序制御・誤り訂正や再送制御などが可能である。
    ベーシック手順とHDLC手順はこの方式。 公衆電話網・パケット交換網・ISDN・ATM網など
  • コネクションレス方式
    データリンクが確立したことを確認せずに送受信する方式。
    相手端末の存在や状態を確認せずに送信する。余計な手続きが不要なため、通信の高速化が図れる。
    IP・UDP通信など

同期制御
データを転送する際に、送信側と受信側のデータのやり取りのタイミングをとったり、受信側の処理状況によって、データの取りこぼしがないように送信速度を調整するフロー制御をおこなったりする。

誤り制御
伝送されたデータの誤りを検出し、訂正したり、データの再送を指示したりする。

ルーティング
通信相手との経路が複数ある場合、どの経路を通るか決めることをルーティングと呼んでいます。

b. 伝送制御手順

回線の接続や切断(回線制御)、通信相手の確認(データリンク制御)、データの伝送(同期制御・誤り制御)、などの伝送制御を行う一連の制御手順を伝送制御手順という。伝送制御手順の種類には、以下の3つがある。

  1. 無手順
    パソコン通信などで使われる方式で、手順の取り決めがなく、回線が空いてさえいれば送信を開始する。信頼性が低く、低速回線向き。
  2. ベーシック手順(基本型伝送制御手順)
    送受信間で伝送制御キャラクタをやりとりして、相手側が受信できる状況であることを確認し、データリンクを確立した後に、送信を開始する。またデータごとに正しく相手先に届いたことを確認してから、次のデータを送り出す。
    ベーシック手順には、ポーリング/セレクティング方式とコンテンション方式がある。
    ベーシック手順では「キャラクタ同期」で「水平垂直パリティ」を使用しています。
  3. HDLC(ハイレベル・データ・リンク・コントロール)
    伝送制御キャラクタなどの制御情報や誤り制御情報とともに、データをフレーム(一定の形式の枠組)に収容して、フレーム単位でやりとりする方式。

HDLC
HDLC(High level DataLink Control)手順とは、通信速度、伝送効率、信頼性を高いレベルで実現する伝送制御手順です。
HDLC手順は、ISOで標準化され、日本でもJIS規格化されています。
HDLC手順は、データをひとかたまりにしたフレーム(frame)とよばれる単位で、データの送受信を行ないます。フレームの構成は次のようになっています。

F A C I FCS F

記号 名称 内容
F フラグシーケンス フレームの開始と終了を表します。「01111110」 という固定のビットパターンとなります。
A アドレスフィールド 送信先もしくは送信元のアドレスです。8ビットで表現されます。
C 制御フィールド フレームの種類と制御内容、フレーム番号を表します。
I 情報フィールド 転送するデータ内容を表します。
FCS フレームチェックシーケンス CRC方式による誤り制御のシーケンスを表します。


HDLC手順では、フレームを連続して転送することが可能です。 連続して送信しているときは、下図のような状態でデータ転送を行なっていることとなります。

データ送信方向 ← 

← フレーム 1 → ← フレーム 2 → ← フレーム 3 →
F A C I FCS F F A C I FCS F F A C I FCS F

HDLC手順では、フレームの開始と終了を表す F;フラグシーケンスは、「01111110」という決められたビット列です。 もし、I;情報フィールドに「01111110」というデータが含まれていたらどうなるでしょうか? 当然ながら、データ受信側では、I;情報フィールド 受信中に、F;フラグシーケンス のビット列を受信することなり、フレームの構成が分からなくなってしまいます。
このような問題に対処するため、HDLC手順では、

  • 送信側では、連続する5個の「1」の直後には、「0」を1個挿入する
  • 受信側では、連続する5個の「1」の直後の「0」を1個除去する

という決まりの制御を、送信側、受信側で行なうことで、I;情報フィールド 受信中に、F;フラグシーケンス のビット列が出現しないようにして、この問題に対処しています。
HDLC 手順は、OSI 基本参照モデルのデータリンク層に位置する。


ポーリング/セレクティング方式
中央に「制御局」を設け、この制御局が通信を仕切ります。制御局につながっている別の局を「従属局」と呼びます。制御局が順番に従属局に通信を行うかどうかを確認していきます。この動作を「ポーリング」と呼びます。
ポーリングにより、通信を行いたい従属局は「ACK(肯定)」の信号を制御局に返します。
「ACK(肯定)」を受け取った制御局は従属局にセレクティング(データ転送を行う準備)を行って、データ通信を開始します。

  • ポーリング
    端末側からのの送信要求に対して、ホストが端末に対して送信要求があるかをポーリングしてまわり、送信要求のある端末に対して送信権をあたえる。
  • セレクティング
    ホスト側からの送信要求に対して、ホストが端末に対して受信可能かを問合し、受信可能な端末をセレクティング。

コンテンション方式
ホストまたは、いずれかの端末のうち、送信要求を早く出した側が制御権を獲得する方式。送信相手からACK(受信可能を示す制御符号)が送られてくれば、データリンクが確立する。

マルチリンク手順
複数のデータリンクをまとめて、一つのデータリンクとして提供するための伝送制御手順である。
ISDNの64kbpsの回線2本分を別々の通信に利用したり、2本まとめて回線1本として利用したりすることができる。


b. 同期方式

  [ 例題 ] 
  1. 平成19年度春期 問51  HDLC手順
  2. 平成12年度春期 問41  HDLC手順
  3. 平成12年度秋期 問38  通信制御方式
  4. 平成11年度春期 問41  伝送方式
  5. 平成11年度秋期 問40  HDLC手順


     

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