企業と法務 - 22.企業活動 - 1.経営・組織論 - 2.経営管理

Last Update : April 23 2021 17:01:35

     

a. 経営管理とは

経営管理とは、企業が目指す経営目標の達成に向け、経営資源(人・モノ・金・情報など)を最大限に活用できるように管理することを指しています。経営資源の最適配分、経営資源の有効活用などを行う。そのためには「PDCAサイクル」を繰り返すことで目標を達成する管理の仕組みを作り上げていく。このPDCAサイクルは、「Plan」、「Do」、「Check」、「Action」の4つの行動を表しています。Planは、何をどのようにすればよいのか計画することで、Doは、Planに従い行動すること、さらに、Checkでは、その行動の結果を評価し、Actionで、Checkの結果を受けた改善をしていく。これを繰り返すことで企業活動の品質や作業を継続的に向上させて、より良い経営管理を行っていく。
経営管理には、財務・資産・人事・情報管理などが含まれる。

TQM 】( Total Quality Management : 総合的品質管理)
全社的品質管理手法「TQC」を基盤とし、さらにその考え方を業務や経営へと発展させた管理手法のこと。
現場の品質改善活動をボトムアップ方式で吸い上げるQCやTQCとは異なり、品質改善活動や顧客満足度獲得活動をトップダウン方式でマネジメントから落とし込む考え方のこと。
経営目標を品質改善指標や、顧客満足度指標としてブレークダウンし、それを実行するための品質改善活動や顧客満足度獲得活動、製造プロセスを作り出すことを促すマネジメント手法。


b. ヒューマンリソースマネジメント

ヒューマンリソースマネジメントとは、人材を経営資源の1つとして捉えて、有効活用するための仕組みを体系的に構築・運用すること。
人的資源管理ともいわれ、この言葉通り、1人ひとりの社員を貴重な経営資源と見なし、経営戦略を達成するために適材適所の人材配置や人材育成を実現することが狙いです。

また、優秀な人材を育てるための教育訓練も重要になる。教育訓練には、教育のための研修会や別の場所での集合教育などを行うOff-JT(Off the Job Training)と、作業現場において指導者による実際の作業を通しての教育であるOJT(On the Job Training)がある。教育訓練では、問題解決のためのケーススタディ(Case Study 事例研究)や業務の関連知識を学習させる。
最近では、時間的に融通の利くe-ラーニングなども積極的に利用されている。

コンピテンシ 】(competency : 高業績者行動特性)
仕事で高い業績を継続的に達成している従業員に一貫して見られる行動・態度・思考・判断などの特性のこと

ワークライフバランス 】(Work Life Balance)
働く人が健康的に仕事に対して生きがいを感じて働けるように、仕事と生活のバランスを調和させること。

MBO 】(Management By Objectives)
目標管理とも呼ばれ、仕事への積極性や熱意(モチベーション)を持たせるための手法。従業員とその上司が定期的に目標について話し合い、個々の従業員に目標設定と意識付けを行い、その後目標に対する進捗や実行を自ら管理し成果を挙げるようにする。上司は、その成果により従業員を評価する成果主義の評価方法を行う。

CDP 】(Career Development Program)
多くの職務経験を積むことによる能力開発のこと。キャリア・ディベロップメント・プログラム。
従業員が長期間にわたり1つの職務に従事すると、仕事の熟練やスピードアップを図ることができるが、従業員の考え方や視野を広げるためには、多くの仕事を経験させ、個人が発揮できる能力の幅を広げ、大きな視野を持った判断を行えるようにすることが必要となる。これは、企業側にとっても、必要な人材の量や質を安定的に確保することにつながる。

ワークシェアリング
一人あたりの労働時間を短縮し、多くの人間で仕事を分け合うことにより、雇用を確保する仕組み。
ワーク・シェアリングの種類

  1. 雇用維持型(緊急避難型)
    不況の際の失業対策で行なわれるものです。現在、日本でも非常に注目されているものです。
  2. 雇用維持型(中高年雇用維持型)
    定年後の雇用対策として行なわれるものです。
  3. 雇用創出型
    法律で労働時間短縮を義務付けて、全国的に雇用人数を増加させるものです。
  4. 多様就業対応型
    フルタイム以外にも、いろいろなパターンの就業ができるようにするものです。これにより、子育てをしながらでも仕事をしやすくなります。

アダプティブラーニング
学習する人、一人一人の能力や習熟度に合わせて学習教材や学習方法を選択して学習する方法。

HRテック 】 (HR Tech)
HRテックとは、「HR(Human Resource):人的資源」と「テクノロジー( Technology)」を掛け合わせた造語です。
人工知能(AI)、ビッグデータ、クラウドなどの先端テクノロジーを駆使し、採用・育成・評価・配置のあらゆる人事業務を効率化させ、人事業務の改善を行うこと。

ジョブローテーション
社員に対し一定期間で複数の部署を経験させることで、社内のさまざまな仕事への理解を深めるとともにネットワークを築く制度のことです。

テレワーク
情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことです。

  • 自宅利用型テレワーク(在宅勤務)
    自宅のインターネット環境からICTを活用して働くスタイルです。
  • モバイルワーク
    モバイルインフラ環境を利用し、取引先に駐在して仕事をしたり、新幹線での移動中やカフェに立ち寄って仕事をしたりと、オフィス以外で働くスタイルです。
  • サテライトオフィスワーク
    地方や郊外、または都心に設けられたサテライトオフィスで、ICTを活用して本社や支社で働く従業員や、他のテレワークで仕事をしている従業員とコミュニケーションをとりながら、業務を遂行するのがこのスタイルです。
    なお、サテライトオフィスは本社や支社といった通常のオフィスとは全く別のものであり、従業員の通勤時間を短縮し、遠隔勤務するための通信環境などを備えた「テレワークのためのオフィス」として設置されたワークスペースのことを指します。

ダイバーシティ
性別、人種、国籍、宗教、年齢、学歴、職歴など多様さを活かし、 企業の競争力に繋げる経営上の取組のこと


c. 行動科学

行動科学とは、人間の行動を科学的に分析し、法則性を見つけ出すこと。

XY理論
人間には、X理論(性悪説)とY理論(性善説)の2つの側面がある。
X理論(性悪説)とは、伝統的な人間行動制御理論に基づく、古来からの人間観で、本来人間は仕事嫌いで、責任を回避し、安全を好むため、企業内で仕事に従事させるためには、強制・命令・処罰が必要としている考え方である。しかし、このような人間観は修正されるべきであり、より近代的な管理の理論としてY理論をとるべきと考えられた。
一方、Y理論(性善説)とは、仕事好き、目標のために進んで働く、自我欲求・自己実現が満足できれば献身的に目標達成に貢献する、条件次第で責任をとる、創意工夫の能力があるといったものを本来人間は保持しているといった考え方である。
これまでは、企業経営者は、X理論に立った考え方が主流であったが、近年は、経営者は従業員が協働することによって各自の目標を達成する条件や環境を作り出すことが責務である、としたY理論に立った考え方を主流となりつつある。

動機付け・衛生理論
職務への満足・不満足を起こす要因に関する理論。
満足を得る要因を動機付け要因、不満足を得る要因を衛生要因という。
人間は、満足要因と不満足要因は別であり、不満足要因が取り除かれても満足になるとは限らないという考え方。

コンフリクト管理
コンフリクトとは意見や感情の衝突という意味で、職場での上司と部下、部門と部門の関係など、立場や考え方の違いで生じる意見の衝突などを戦略的に解決する手法をコンフリクト管理という。

  • 協働:協力し合って両立する方策を考え出す(コミュニケーション)
  • 説得:相手を納得させて自分の主張を通す(リーダーシップ)
  • 妥協:双方が譲り合って折り合う点を見つける(ネゴシエーション)
  • 譲歩:自分の主張をあきらめて相手に譲る
  • 回避:対立を避けて解消を先送りにする

ロジカルシンキング
物事を論理的に考えることのできる手法

ブレーンストーミング
集団(小グループ)によるにアイデア発想法の1つで、会議の参加メンバー各自が自由奔放にアイデアを出し合い、互いの発想の異質さを利用して、連想を行うことによってさらに多数のアイデアを生み出そうという集団思考法・発想法のこと。省略して、「ブレスト」「BS」などともいう。


d. リスクマネジメント

BCP 】( Business Continuity Plan :事業継続計画)
BCPとは事業継続計画(Business Continuity Plan)の頭文字を取った言葉です。企業が、テロや災害、システム障害や不祥事といった危機的状況下に置かれた場合でも、重要な業務が継続できる方策を用意し、生き延びることができるようにしておくための戦略を記述した計画書です。また、事業継続のための戦略はBCM(Business Continuity Manage ment)と呼ばれています。


  1. 中核事業を特定する
    緊急時に優先して復旧すべき中心となる事業を特定しておく。
  2. 復旧までの目標時間を設定する
    中核事業を復旧させるために必要な目標時間を設定しておく。
  3. 取引先とあらかじめ協議しておく
    中核事業や目標復旧時間について関係取引先と事前に話し合っておく。 共通認識があると、協調して復旧に当たることができる。
  4. 代替策を用意・検討しておく
    事業拠点や生産設備・仕入れ調達などの代替案を事前に用意・検討しておく
  5. 従業員にBCP方針や内容について理解させておく
    緊急時に行うべき作業や行動を経営者・従業員に共通に認識させる。

ビジネスインパクト分析 】(BIA / business impact analysis)
特定の重要な業務が予期せぬ出来事によって、停止・中断した場合に、事業全体が受ける業務上・財務上の影響の度合いを定量的/定性的に分析・評価すること。影響度分析、影響度評価ともいう。BCP/BCMを作成・実施する場合の最初のステップで、事業継続に必要な最小限の機能を特定する。
ビジネスインパクト分析の大まかな手順としては、

  1. 起こり得るリスク・脅威を網羅的に洗い出す。
  2. それらリスクに対して、各業務プロセス/経営資源(ITシステム含む)の脆弱性や相互依存関係を分析
  3. 事業継続に及ぼす影響の大きな要素を特定する。このとき、リスクシナリオとしては最悪の事態を想定する。
  4. 重要な要素を特定できたら、その最大許容停止時間や被害損失額などを算定する。
  5. ビジネスインパクト分析の結果に基づいて、BCPを策定していく。

ISO 22301
緊急事態などから組織を守り、リスクの影響を最小限にするために行うべきことを計画しておく。
事業の中断・阻害に関して、適切な事業継続の能力を開発するためのBCMSを、実施・維持するための体制及びその要求事項について規定しています。これらを達成することで、事業の中断・阻害に関わるコストの低減や内部プロセスの有効性を維持する能力の向上、顧客やサプライヤーなどの利害関係者への評判・信用の保護及び強化などの向上が期待されます。
BCPの国際規格
JIS Q 22301も同じ。


  [ 例題 ] 
  1. 平成29年度秋期 問76  OJT
  2. 平成26年度秋期 問75  ワークシェアリング
  3. 平成24年度春期 問42  BCP
  4. 平成23年度秋期 問61  BCP
  5. 平成22年度秋期 問42  事業継続計画
  6. 平成14年度春期 問74  OJT


     

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