経営戦略 - 19.経営戦略マネジメント - 3.ビジネス戦略と目標・評価 - 1.ビジネス戦略と目標の設定・評価

Last Update : January 02 2021 16:00:48

     

a. ビジネス戦略と目標の設定・評価

企業理念は経営理念とも呼ばれ、企業が活動する際の拠り所や指針となる考え方であり、企業の存在意義や価値観(ミッション)を示したものです。この企業理念に基づいてビジネス戦略を策定し実行するためには、まず、企業の将来のあるべき姿を示したビジョン(経営目標)を設定します。
次に、設定した企業のビジョンを具現化するために、SWOT分析などの手法を用いてビジネス環境を分析して現状の経営環境を把握し、具体的な目標である戦略目標を設定します。そして、設定した戦略目標を達成するために重点的に取り組むべき重要成功要因(CSF:Critical Success Factors)を抽出し、経営戦略や事業戦略をさらに具体化し、より実践的なものにしたビジネス戦略を立案します。
最後に、戦略目標の達成度合いを計るための指標としてKGI(Key Goal Indicator、重要目標達成指標)、KPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)などを設定し、ビジネス戦略を実際に実行するための実行計画を策定します。
なお、「重要成功要因の抽出」と「ビジネス戦略の立案」は同時並行的に行われるものであり、「戦略目標の達成に不可欠な重要成功要因を抽出し、ビジネス戦略を立案する」という手順を経て立案されたビジネス戦略に対して、さらに、「その戦略の実現に不可欠な重要成功要因を抽出し、再度ビジネス戦略を立案する」というプロセスを繰り返します。このように、プロセスを何度も繰り返しながら、より実現可能性の高いビジネス戦略にブラッシュアップしていきます。

KGI 】( Key Goal Indicator :重要目標達成指標)
KGIは、重要目標達成指標のことで、企業目標やビジネス戦略を実現するために設定した具体的な業務プロセスをモニタリングする指標の1つで、何を持って成果とするかを定量的に定めたものです。
KGIは、業務プロセスにおける目標(ゴール)と、それが達成されたか否かを評価するための評価基準である。その中間的数値指標としてKPI(重要業績評価指標)と対で利用されることが多い。
経営戦略では、まず命題となる「目標」を定め、次にその目標を具体的に実現するための「手段」を策定し、その手段がきちんと遂行されているかどうかを定量的に測定する「指標」を決める。この目標を「戦略目標」、手段を「CSF(主要成功要因)」、指標を「KGI(重要目標達成指標)」、「KPI(重要業績評価指標)」と呼ぶ。

KPI 】( Key Performance Indicator :重要業績評価指標)
KPIは、重要業績評価指標のことで、企業目標やビジネス戦略を実現するために設定した具体的な業務プロセスをモニタリングするために設定される指標(業績評価指標:performance indicators)といい、その中で特に重要なものを指します。
KGIがプロセスの目標(ゴール)として達成したか否かを定量的に表すものであるのに対し、KPIはプロセスの実施状況を計測するために、実行の度合い(パフォーマンス)を定量的に示すものである。KGI達成に向かってプロセスが適切に実施されているかどうかを中間的に計測するのが、KPIだといえる。
企業の将来性を含めた評価を可能にするもの。そのために、財務関連の数値をベースにした従来の業績評価のみならず、ブランドの力、顧客のロイヤリティ、社員のナレッジなどといった、いわば無形ともいえる企業資産を数値化しつつ、これにおける関連性を明確にしていく。このような主要業績評価指標に基づくことで、共通目標に向かって進むための社員間コンセンサスをとることが可能になる。欧米では多くの企業が導入し、成功を収めているという。
一般的に利用されるKGIとしては「売上高」「利益率」「成約件数」などがあるが、これに対して「引き合い案件数」「顧客訪問回数」「歩留まり率」「解約件数」などがKPIとなり、これを日次・週次など一定期間ごとに実績数値を計測し、プロセスの進ちょくを管理する。
CSF/KGI/KGIを使った経営手法として注目されているのがバランスト・スコアカード(BSC)だ。BSCは企業活動を(1)財務的視点、(2)顧客の視点、(3)社内ビジネス・プロセスの視点、(4)学習と成長の視点の4点で評価する。この4分野において戦略目標やCSF、KPIを設定し、モニタリングを繰り返して経営全体を把握する。BSCの業績評価指標は、先行指標と結果指標の2つに大別される。

CSF 】(critical success factors)
経営戦略やITガバナンスなどを計画的に実施する際、その目標・目的を達成する上で決定的な影響を与える要因のこと。ビジネスの成否に大きな関係を持つマネジメント上の重点管理項目といえる。
経営戦略を実行する上で、何をすればよいのかを決定するものであり、その分析・決定は重要な意味を持つ。マネジメントシステムにおいてCSFは、戦略/戦術レベル、全社/部門/個人と段階・レベルを追って策定され、最終的にはより具体的・定量的なKGI(重要目標達成指標)、KPI(重要業績評価指標)にまで落とし込まれる。

BSC 】(balanced scorecard)
企業や組織のビジョンと戦略を、4つの視点から具体的なアクションへと変換して計画・管理し、戦略の立案と実行を支援するとともに戦略そのものも市場や環境の変化に合わせて柔軟に適合させるための経営戦略立案・実行評価のフレームワーク。またはこのフレームワークで利用される達成目標と評価指標を記載したカードのこと。
1990年、情報化社会に適合した新たな業績評価システムを検討するため、米国コンサルタント会社KPMGのリサーチ部門であるノーラン・ノートン研究所で行われた研究プロジェクトが起源。
この研究は、従来の財務的業績指標に偏った業績管理の限界を打破すべく、広い範囲の評価基準を策定し、そこから顧客の満足度や従業員のやる気など、評価の難しい無形資産の価値を明確化することを目指した。そこで財務的業績評価指標と非財務的業績評価指標を併用することによって、企業の将来、現在、過去の活動が適正かどうかを判断するというのが基本の考え方になる。
バランス・スコアカードでは、

  • 「財務の視点(過去)」
    株主や従業員などの利害関係者の期待にこたえるため、企業業績として財務的に成功するためにどのように行動すべきかの指標を設定する。
  • 「顧客の視点(外部)」
    企業のビジョンを達成するために、顧客に対してどのように行動すべきかの指標を設定する。
  • 「内部業務プロセスの視点(内部)」
    財務的目標の達成や顧客満足度を向上させるために、優れた業務プロセスを構築するための指標を設定する。
  • 「イノベーションと学習の視点(将来)」
    企業のビジョンを達成するために組織や個人として、どのように変化(改善)し能力向上を図るかの指標を設定する。

の “4つの視点”を用いる。これらの視点から戦略に適合した個人や部門ごとの個別の実施項目(CSF)/数値目標(KGI)/評価指標(KPI)を設定し、 PDCAサイクルを回してこれらをモニタリングすることによって、社内のプロセス改善や各個人のスキルアップを促し、企業変革を推進するという形を取る。

これら4つの視点はそれぞれ独立ではなく、各指標間の因果関係に基づいて設定されることが求められる。そのことにより、短期的利益と長期的利益、全社目標と部門目標、株主・顧客・従業員などのスタークホルダー(利害関係者)間のバランスを取りながら、統一的な戦略策定とその戦略と整合性のある実践が行われるようになる。2000年には、4つの視点間で一貫性のある戦略を策定するためのツールとして、戦略マップが提唱された。
BSCは当初、業績評価ツールとして登場したものだが、基本に“財務(過去)重視経営を超える”というコンセプトがある。その後、 1990年代の半ばには第二世代の「戦略的マネジメントシステム」、2001年以降は第三世代の「戦略志向にするマネジメントシステム」になったとされる。


  [ 例題 ] 
  1. 平成27年度春期 問65  バランススコアカード KPI
  2. 平成26年度秋期 問71  バランススコアカード
  3. 平成24年度春期 問69  バランススコアカード
  4. 平成22年度秋期 問69  バランススコアカード


     

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