プロジェクトマネジメント - 14.プロジェクトマネジメント - 6.プロジェクトの時間 - 3.ツールと技法

Last Update : April 17 2021 11:54:11

     

a. スケジュールの種類

規模が大きくなると1つのスケジュールですべてまかなえるわけはなく、いくつかの目的に合ったスケジュールを作成し、それを元にスケジュール管理を行う。
それらには、大日程計画、中日程計画、小日程計画の3種類がある。

大日程計画
マスタースケジュールとも呼ばれ、プロジェクト全体のスケジュールを作成する。そのとき、詳細な内容で作成するのではなく、月単位・週単位レベルで作成する。

中日程計画
工程別作業計画とも呼ばれ、大日程計画の一部の期間を対象にして、プロジェクトの工程やサブシステム、担当チーム、などに分割してそれぞれの計画をより詳しく作成する。

小日程計画
週間作業計画とも呼ばれ、個人や担当グループで、機能や作業工程ごとに、日単位の詳細な内容で作成する。個人別の進捗管理などでも利用される。

ガントチャート
プロジェクト管理や生産管理などで使われる、作業計画およびスケジュールを横型棒グラフで示した工程管理図のこと。またはその表記法をいう。
縦軸(行)に作業(タスク、アクティビティ)ないし資源(リソース)を置き、横軸に期間(時間)を取って、各作業/資源の所要期間をそれに比例した長さの横棒で示した図である。


b. スケジュールの作成手法

プロジェクトでは、スケジュールに関する状況を定例会議などで報告する進捗報告が重要である。
全員が自分の担当だけではなく、全体のスケジュールの進捗を把握することで、プロジェクト全体のスケジュールを遅れないようにする意識が高まる。

スケジュール・ネットワーク図
アクティビティの順序や各アクティビティの依存関係を図で表現したもの。プロジェクトのアクティビティを一覧で確認できる。
WBSで分解した各作業を日程計画に落とし込むときに使うツール。ADM,PDMなどがある。

  • ADM(Arrow Diagramming Method)
    アローダイアグラム法とは、アクティビティを矢印で表し、アクティビティ間をノードで結んで、アクティビティの開始・終了の依存関係をネットワークに表したもの。
     ・作業を矢印で表す。
     ・作業と作業の接続点(node:ノード)を丸印で表す。
     ・PDMと比べて過去のもの
     ・アローダイアグラムの記述ルール
    1. それぞれの作業は、スタートとゴール以外は前後に結合点を持っている。
    2. すべての作業は「終了-開始」関係にある。
    3. 結合点は二度通ってはならない。
    4. 結合点の番号は、作業の方向に大きくなるようにつける。
    5. 並行作業がある場合は、ダミー作業を用いて表現する。

  • PDM(Precedence Diagramming Method)
    プレシデンスダイアグラム法とは、依存関係にある2つの工程間の順序を論理的に4つの関係で定義することで表記する方法のこと。
    アクティビティ・オン・ノード(AON)とも呼ばれる。
     ・作業を四角のノードで表す。
     ・作業の関連をアローとして表す。
     ・依存関係(前後関係)は以下の4種類が設定可能である。ここがADMと異なる。
       FS: 終了-開始
       FF: 終了-終了
       SS: 開始-開始
       SF: 開始-終了

FS
(finish-to-start)
先行作業が終わると後続作業が始まる
SS
(start-to-start)
先行作業が始まると後続作業も始まる
SF
(start-to-finish)
先行作業が始まると後続作業が終わる
FF
(finish-to-finish)
先行作業が終わると後続作業も終わる
作業間の4つの順序関係(タスクAは先行作業、タスクBは後続作業)

作業同士の関連には,大きく4つのタイプがある。
(1)前の作業が終わらないと,次の作業に着手できない関係
(2)作業を同時に開始できる関係(ただし,必ずしも同時に開始しなくてもよい)
(3)作業の終了が同時になる関係(必ず同時に終了しなければならない)
(4)互いの作業は完全に独立し,並行作業できる関係(作業同士が無関係)

PERTなどは先行作業が終了すればすぐに後続作業がスタートする“イベントドリブン型”であったのに対し、PDMは連続する2つの作業の間にラグ(待ち時間)とリード(準備期間)の概念を持ち込み、より精緻な日程計画を表現できるように工夫されている。

クリティカルパス
クリティカルパスは、経路の中で最も時間のかかる経路のことを言う。
クリティカルパスは、作業工程の順序のみを考慮した最長スケジュールのこと。

クリティカルチェーン
作業工程の従属関係とリソースの従属関係の両方を考慮に入れて、作業所要期間を決めている最も長い作業の流れのこと。
クリティカルチェーンは、作業工程の順次とその作業にかかわるリソースの必要量との両方を考慮にした、最長スケジュールのこと。

※リソースが十分に存在し、各作業ごとのリソース競合が発生しない場合には、クリティカルチェーンとクリティカルパスは同じになる。


c. プロジェクト期間の圧縮法

プロジェクト期間の圧縮法として、「クラッシング(Crashing)」と「ファーストトラッキング(Fast Tracking)」がある。

  • クラッシング
    新たな人員などのリソース(経営資源)を投入することで、期間の短縮を目指す方法である。当然のことながら、コストが新たにかかる。

  • ファーストトラッキング
    通常は順を追って実行するフェーズやタスクを同時並行で進めることにより全体のスケジュールを短縮しようとすること。
    例えば、設計が完全に終了してから開発に取りかかる予定を、設計の途中でも、できるところから開発を進める方法である。
    前作業の完了を待って開始する後作業を、その完了を待たずに先行開始して並行して作業します。例えば、詳細設計が完了する前に、設計がある程度できている部分からコーディングを開始するなど。
    この場合、詳細設計の完了レビューが行われていないため、コーディングに手戻りが発生するリスクがあります。 なお、この前倒しした期間をリードと呼びます。

リード
複数のタスクをオーバーラップできる期間のこと

ラグ
1つのタスクが終わっても、すぐに次のタスクに取り掛かれない期間のこと

d. スケジュールの管理手法

EVM 】( Earned Value Management )

スケジュールの管理にEVMを用いる場合は,時間軸に沿って各作業の予定工数「PV(Planned Value)」を積み上げた折れ線グラフの形状を見ることによっても,作業負荷のバランスをチェックできる。PVは通常,S字カーブを描く。このため,PVがなだらかなS字を描いていない場合は,特定の時期に作業が集中している可能性があるので,計画を見直す必要がある。

プロジェクトマネジメント - 14.プロジェクトマネジメント - 7.プロジェクト・コスト・マネジメント - 3.代表的なコスト見積手法とコスト管理手法 を参照


トレンドチャート
トレンドチャートは、計画と実績の時間的推移を表現するのに適し、進捗並びにその傾向が良くわかり、プロジェクト全体の費用と進捗の管理に利用されます。

矢印の向きスケジュール予算消化
-多い
遅れ多い
遅れ-
遅れ少ない
-少ない
進み少ない
進み-
進み多い

マイルストーン
進捗管理上のチェックポイントのこと。


  [ 例題 ] 
  1. 平成28年度春期 問53  クラッシング
  2. 平成28年度秋期 問52  クラッシング
  3. 平成23年度春期 問51  ファーストトラッキング
  4. 平成14年度秋期 問53  システム開発


     

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