企業と法務 - 23.法務 - 3.労働関連・取引関連法規 - 1.労働関連の法規

Last Update : April 23 2021 17:08:02

     

a. 労働基準法

労働基準法は、最低賃金・労働時間・休息・休暇などに対して、最低限守らなければならないことを定めた法律であり、パート、アルバイト、嘱託等の名称にかかわらず、すべての労働者に適用される。
使用者(事業主)は、この法律を理由に労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない(法第1条)。 また、この法律に定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分について無効となり、この法律で定める基準によることとなる(法第13条)。 労働基準法は、1人でも労働者を使うところではすべての事業又は事務所に適用される。ただし、同居の親族のみを使用する事業や家事使用人には適用されない。

  • 労働契約
    雇用にあたり、使用者と労働者は、労働条件を明示して労働契約を結ばなければならない。労働基準法に反する条件での労働契約は認められない。
  • 賃金
    毎月1回以上、定められた期日に、通貨で全額を直接労働者に支払わなければならない。
  • 労働時間
    労働時間は、1日8時間以上、1週間に40時間を超えてはならない。
    時間外労働させる場合は、従業員の過半数で組織する労働組合と書面による協定を結び、行政官庁に届け出る必要がある。(36協定)
    • 変形労働時間制
      1ヶ月以内の一定期間を平均して、一週間の労働時間が40時間以下の範囲であれば、特定の日や週について1日や1週間の労働時間を超えてもよいとする制度
    • フレックスタイム制
      労働者自身で、定められた時間帯の中で、始業及び終業の時刻を設定して働くことができる制度
    • 裁量労働制
      情報処理システムの分析・設計などの専門的職種や企画管理業務など、業務の性質上その遂行の手段や時間配分などを労働者の裁量にゆだねる必要のある職種について、実際の労働時間数とはかかわりなく、労使で定めた労働時間数を働いたものとみなす制度。
  • 就業規則
    常時10人以上の労働者を雇っている場合は、勤務時間や賃金、退職に関する事項などを定め、就業規則として行政官庁に届け出なければならない。
  • 災害補償
    労働者が業務上負傷したり、疾病にかかったりした場合、使用者は療養補償・休業補償・障害補償を行わなければならない。
  • 解雇
    労働者を解雇しようとする場合は、少なくとも30日前に解雇予告を行わなければならない。
    療養のためや産前産後のための休業期間とその前後30日間は解雇してはいけない。
  • 定年
    定年退職を導入している企業においては、高年齢者雇用安定法により、65歳への引き上げ、継続雇用制度の導入、定年制の廃止のいずれかの措置への対応をしなければならない。
  • 妊産婦など
    母性保護を図るため、妊産婦の危険有害業務への就業制限や時間外労働、変形労働時間などへ従事することを制限している。


b. 労働者派遣法

労働者派遣法とは、派遣で働くスタッフの権利を守るための法律であって、これを実現するために、派遣会社とか派遣先企業が守るべきルールを定めているのです。
労働者を企業に派遣するためには認可が必要であり、労働者派遣法は、派遣業者が守らなければならないことを定めた法律である

  • 派遣事業を、自社社員を派遣する特定労働者派遣事業と、登録した労働者も派遣する一般労働者派遣事業に分類している
  • 派遣労働者に諸条件を提示しなければならない
  • 労働者から苦情が出た場合は、派遣先と派遣元が連携して対処しなければならない
  • 派遣先への転職は禁止しない
  • 派遣を禁止する業種を定めている
  • 26 業種については派遣期間の制限はないが、それ以外は 3 年以下とする
  • 派遣先が派遣元事業主から労働者派遣を受けた労働者を、さらに業として派遣することを禁止

一般派遣、特定派遣
労働者派遣には、大きく分けて一般派遣と呼ばれる「登録型派遣」と特定派遣と呼ばれる「常用型派遣」がある。一般派遣は派遣会社に登録している人が派遣先企業に派遣されるが、特定派遣は派遣会社の正社員や契約社員としての雇用関係にある人が派遣先に派遣される。
特定派遣も一般派遣も、派遣会社と雇用契約を結ぶ点では同じだが、雇用契約期間が大きく異なる。
一般派遣の場合は、まず派遣会社に登録、その後仕事が決定し、それに合わせて雇用期間が決まるのに対し、特定派遣の場合はまず雇用契約を結び、その後仕事が決定する。
言い換えると、一般派遣は1つの派遣先での仕事が終わってしまうと雇用がいったん途切れるが、特定派遣は1つの派遣先での仕事がない時でも雇用されたまま。1986年に施行された労働者派遣法では、派遣会社が特定派遣を行うには派遣する社員を常用雇用しなくてはならない、と定められている。
常用雇用とは期間限定ではないことを意味する。多くは正社員や契約社員などになっている。特定派遣は継続して雇用されているので、雇用に対する安心感は特定派遣の方が高いと言える。

紹介予定派遣
派遣の種類の一つに「紹介予定派遣」という制度がある。一定の派遣期間を経て、最終的には直接雇用されることを前提とする点で、一般的な派遣とは異なるが、どちらも労働者派遣法に定められている制度。紹介予定派遣は、雇用の安定化を図るため一般的な派遣より遅れて2000年12月に認められた。
派遣期間をいわゆるお試し期間とし、仕事内容が希望やスキルとマッチしているかを確認できるため、ここ数年問題視されている早期退職を防ぐことができ、企業と労働者の双方にメリットがあることが背景にある。


c. 労働契約

労働契約法
労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする法律。

労働者派遣


派遣元が雇用する労働者を、派遣先の指揮命令を受けて、派遣先の業務を遂行する。

●2重派遣の禁止。
●派遣先に派遣労働者が雇用されることは制限できない。
●派遣先は正等な理由なく派遣契約を解除することはできない。
●派遣事業者は3年を超えて同一の労働者を同一の場所にの同一の業務に派遣してはいけない。


請負


請負業者が雇用する労働者を、自ら指揮命令し、注文主の業務を遂行する。


労働者供給

供給契約に基づき、労働者は供給先へ雇用し、供給先の指揮命令を受けて業務を遂行する。


出向

労働者は出向先とも雇用契約を結び、業務を遂行する。


d. その他の法律

労働安全衛生法
労働者の健康と安全の確保や、快適な作業環境の形成を目的として、労働災害の防止についての総合的、計画的な対策を行うことを定めている。 これらのことが、事業者の努力義務とされている。

男女雇用機会均等法
職場における採用・配置・昇進などで男女差別を禁止する法律。
妊産婦のための健康管理や結婚・出産を理由とした退職勧奨の禁止・セクシャルハラスメントの防止など女性が働く機会を保護している。

育児・介護休業法
育児や家族の介護を行いやすくするための事業主が行うべき措置を定めたもの。
育児や介護のため一定期間の休みが取れること(育児・介護休業)、小学校就学前の子が病気やけがの場合に休暇が取れること、育児や介護を行う人の勤務時間の短縮や深夜労働・時間外労働の制限などの措置が決められている。

パートタイム労働法
短時間労働者の労働条件や労働環境の改善を目的にした法律。パートやアルバイトなどの短時間労働者の労働時間や待遇などの雇用管理の改善や教育訓練の実施、福利厚生の充実などの事業主の行うべきことが規定されている。

公益通報者保護法
企業や役所の不祥事を内部告発した人〈公益通報者〉を保護する目的で施行。告発を理由とする解雇を無効としたほか、免職や降格、減給などの不利益な扱いを禁じている。
「公益通報をしたことを理由による公益通報者の解雇の無効」と、「公益通報に関する、事業者と行政の対応措置」の規定から構成されている。
保護されうる公益通報者には、労働者、派遣労働者、さらに、請負契約に基づいて事業を行なう労働者がある。また、保護の内容として、公益通報したことを理由とする「解雇」「労働者派遣契約の解除」の無効や、その他の不利益な扱い(降格、減給など)の禁止があげられている。2006年4月から施行されている。


  [ 例題 ] 
  1. 平成30年度春期 問80  労働者派遣法
  2. 平成29年度秋期 問79  雇用関係
  3. 平成26年度春期 問80  労働者派遣法
  4. 平成24年度秋期 問75  裁量労働制
  5. 平成24年度秋期 問80  労働者派遣法
  6. 平成23年度秋期 問80  労働契約
  7. 平成22年度春期 問79  労働者派遣法
  8. 平成22年度秋期 問80  労働者派遣法
  9. 平成21年度秋期 問80  派遣契約
  10. 平成20年度秋期 問80  労働者派遣法


     

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