企業と法務 - 22.企業活動 - 3.会計・財務 - 2.財務会計と管理会計

Last Update : January 02 2021 16:00:51

     

a. 財務会計と管理会計

企業会計には、目的の異なる3つのものがあります。(1)株主、債権者や取引先など外部の利害関係者に、企業の実態を公正に伝える「財務会計」、(2)企業の状態を定量的に把握し、経営者の意思決定や業績評価など内部管理に役立てる「管理会計」、これに、(3)法人税額を算出するための「税務会計」が加わります。
財務会計における財務諸表の作成規則を会計基準という。

財務会計
財務会計は、商法や証券取引法、法人税法などの諸法規に基づいて行われます。1年間の営業活動の成果を集計した損益計算書や、決算日時点での企業の財政状況を表した貸借対照表などの財務諸表を作成し、決算書類として株主総会に提出、承認を得た後に、外部へ公開することが義務づけられています。投資家や取引先は、この財務諸表の情報をもとに企業の実態を分析し、投資や取引の判断を行います。

管理会計
管理会計は、企業内部で、経営者が戦略立案や経営計画の策定を行ったり、組織や人の業績評価を行ったりするための材料として利用されるものです。財務データに限らず、経営状態を把握し、次の施策につなげるために必要な情報を、企業独自の方法により、ビジネスユニット別や活動別などの意味のある単位で収集・加工し、原価計算や損益分岐点などの分析に用います。

b. 財務指標

財務分析に使用する、財務諸表から作成した各種指標を財務指標という。

  1. 収益性指標
    企業が企業活動により得た利益の程度を表す指標のこと。
    自己資本利益率(ROE)、総資産利益率(ROA)、投下資本利益率などがある。

    自己資本利益率 ( ROE : Return On Equity )
    株主資本に対して、どれだけのリターンがあったのかを示す指標で、当期純利益を株主資本で割った比率で表される。株主資本と他人資本の割合を変更することで、容易に操作が可能な指標であることに注意が必要。
    自己資本利益率 = 営業利益 ÷ 自己資本 × 100

    総資産利益率 ( ROA : Return On Assets )
    企業の所有する総資産に対してどれだけのリターンがあったのかを示した値。利益を総資産で割った比率で表される。利益には様々な利益が使われるが、ROAは、調達資本の資本構成の影響を可能な限り除いた上で収益性を評価することが望ましいため、経常利益に支払利息を足し戻したものを使うことがふさわしいと考えられる。競争力の源泉がブランド、営業力など資産に反映されない企業、業界の場合には、指標の重要性が小さくなることに注意が必要。
    総資産は、流動資産・固定資産・繰延資産など、会社の全ての資産を合算したもの

    総資産利益率 = 計上利益 ÷ 総資産 × 100

    ・総資産当期純利益率(%)=(当期純利益÷総資産)×100
    ・総資産経常利益率(%)=(経常利益÷総資産)×100
    ・総資産営業利益率(%)=(営業利益÷総資産)×100

    投下資本利益率 ( ROI : Return on Investment )
    総資本から事業活動(特定事業)への投下資本(運転資本などの流動資産、有・無形固定資産など)を選別し、投下資本に対してどれだけのリターンがあったのかを示した値。投下資本が対象とする事業活動の営業利益を投下資本で割った比率で表される。投下資本を選別する際に恣意性が入り込む余地があることに注意が必要。
    投下資本利益率 = 計上利益 ÷ 投下資本 × 100

  2. 安全性指標
    企業が持つ負債の返済能力を示す。流動比率や自己資本比率などがある。

    流動比率
    流動比率とは、流動負債(1年以内に返済すべき負債)を流動資産(短期間で換金可能な資産)がどの程度カバーしているかを示す比率。短期的な支払能力がどれくらいあるのかがわかる。短期安全性の指標。
    この比率が高いほど、短期的な資金繰りに余裕があることを示す。
    流動比率が100%以下であれば、短期的な支払のために、資本や長期負債が使用されていることになる。「2:1の原則」とも呼ばれ、流動比率が200%以上あることが安心の目安といわれている。
    流動比率(%) = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100
    流動資産も流動負債も貸借対照表からチェックできる。
    流動資産は1年以内に回収される予定の資産だが 回収不能が発生することもあるので比率が高い方が良い。
    ただ業種によっては回収サイクルが早いところもので 流動比率が低いから安全性が低いといえない場合もある。

    自己資本比率
    自己資本比率とは、返済不要の自己資本が全体の資本調達の何%あるかを示す数値であり、
    自己資本比率(%) = 自己資本 ÷ 総資本(自己資本+他人資本)
    の式で算出する。
    自己資本比率が小さいほど、他人資本の影響を受けやすい不安定な会社経営を行っていることになり、会社の独立性に不安が生じる。自己資本比率が高いほど経営は安定し、倒産しにくい会社となる。自己資本比率は会社経営の安定性を表す数値であり、高いほどよい。
    一般に自己資本比率が70%以上なら理想企業、40%以上なら倒産しにくい企業といえる。

  3. 成長性指標
    売り上げや利益の伸びを表す。売上高伸び率や利益伸び率などがある。これらが大きいほど業績や利益が伸びていることがわかる。

    売上高伸び率
    前年と比べてどれだけ売上高が伸びているかの比率。
    当期売上高÷前期売上高
    から求める。

    利益伸び率
    前年と比べてどれだけ利益が伸びているかの比率。
    当期利益÷前期利益
    から求める。

  4. 効率性指標
    効率性指標とは、どれくらい資本を有効活用しているかを評価測定するための指標

    総資本回転率(総資産回転率)
    事業年度において、企業が総資本をどの程度効率的に活用しているかをみるもの。 事業に投資をした総資本は、売上によって回収されるが、その状況を表す。総資本が売上高を通じて何回新しいものになるのか回転数として示される。同じく総資産回転率は、求められる値は、総資本回転率と同じものとなるが、企業が総資産をどの程度効率的に活用しているのかとみるものである。
    回転数は、高ければ高いほど、総資本(総資産)が効率的に活用されていると判断することができる。
    当期売上高÷総資本(or 総資産)
    から求める。


c. 設備投資の経済性計算

設備投資の経済性計算とは、設備投資を行うか否か、あるいは複数の設備投資案のいずれを採択するかについて、会計的な判断を行うための方法です。
投資が行われる場合には、様々な要素を検討する必要があります。たとえば、製品市場の状況はどのように動いていくのか、競合他社の動向はどうか、技術的な発達はいつくらいにどのくらいまで進むのかなどがあります。こうした情報のひとつがここで説明する経済性計算の結果です。経済性計算は、上記の要素と並列して存在しているというよりは、これらの要素の検討の結果、一定の仮説にもとづいて、それらを会計的な数字を使って説明するというものです。




     

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