経営戦略 - 19.経営戦略マネジメント - 1.経営戦略手法 - 3.事業戦略

Last Update : April 12 2018 09:41:22

     

a. 競争戦略

競争戦略には、ハーバード大学ビジネススクールのマイケル・ポーター教授が提唱した3つの基本戦略がある。差別化戦略の他に、コスト面で優位に立つ「コスト・リーダーシップ戦略」と、特定の領域に特化する「集中戦略」がある。

コストリーダシップ戦略
競争基本戦略の一つで、もっとも低いコストを実現することで競争優位を実現する戦略。
自社の製品やサービスを提供する市場において相対的コスト(価格)がもっとも低い状態を実現することにより、他社との競争優位性を実現する戦略。製造コストはもちろんのこと流通や販売コストにいたるまでさまざまな部分でのスリム化が必要となります。

差別化戦略
競争基本戦略の一つで、他社との差別化を図ることで競争優位を実現する戦略。
他社との徹底した差別化を実現することが必要で、製品やサービス自体の差別化とマーケティング活動の差別化の両面が考えられる。効果的な差別化戦略を実現するためには、この両者のバランスとシナジーが重要となります。

集中戦略
特定の顧客層(市場セグメント)や特定の地域市場、特定の流通チャネルなどに集中する戦略。
集中戦略では、特定のターゲットを狙う。ターゲットを絞り込むことで、競合他社より効果的に、かつ効率よく戦うことができるという考え方に基づく。
集中戦略のリスクには、ターゲット市場での価格が高くなりすぎて顧客の許容範囲を超えてしまい、集中化によって実現した差別化の価値を維持できなることが考えられる。
また、戦略的に絞り込んだターゲット市場と全体市場との間で要求される製品のニーズの差が小さくなると、集中の効果が減殺されることがある。さらに、ターゲット市場そのものが縮小・消滅してしまう恐れもある。

ブルーオーシャン戦略
競争の激しい既存市場を「レッド・オーシャン(赤い海、血で血を洗う競争の激しい領域)」といい、競争のない未開拓である市場を「ブルー・オーシャン(青い海、競合相手のいない領域)」と呼ぶ。
ブルー・オーシャンとして新しい価値市場を創造し、ユーザーに高付加価値を低コストで提供することで、利潤の最大化を実現するという戦略のこと。
ブルー・オーシャン戦略を実践する上でもっとも重要なポイントは、新しい価値市場を創造するための「バリュー・イノベーション(価値革新)」という考え方により、市場の境界線を引き直すということです。
分析ツールとして、「アクション・マトリクス」と「戦略キャンバス」がある。

  • アクション・マトリクス
    「取り除く」「増やす」「減らす」「付け加える」という四つのセグメントに、自身が身を置く業界や他社の取り組みを当てはめ、自社の事業を再整理するツール。現状の競争要因に対して、自身でどのように変化をもたらせば、ブルー・オーシャンを創造できるかを整理します。

    ■取り除く
    業界常識として備わっているもののうち、取り除くべきものは何か
    ■増やす
    業界標準と比べて大胆に増やすべき要素は何か
    ■減らす
    業界標準と比べて思い切り減らすべき要素は何か
    ■付け加える
    業界でこれまで提供されていなかったもので、今後付け加えるべきものは何か

  • 戦略キャンバス
    競争要因を横軸に、縦軸はそのレベルを表し、自社の取り組みと他社の取り組みを比較するツールです。各競争要因の点を結び合わせた線が、他社の線と異なる場合は、新たな市場を創造できる可能性が高いことが確認できます。


b. 事業戦略手法

SWOT分析
Strength (強み) , Weakness (弱み), Opportunity (機会), Threat (脅威) の頭文字からきている。
現状分析から経営戦略を立てるために用いる分析手法。
外部環境(外部要因)である機会と脅威、内部環境(内部要因)である強みと弱みをマトリックス図に配置し、どのような対策をとれるかを各欄に記入して戦略を立てていく。

  • 内的要因 - Strength (強み)とWeakness (弱み)
    自助努力で変える事が可能な要因
    人材、財務、製造力などのほか、マーケティングの4P(Production(商品)、Price(価格)、Promotion(販売促進)、Place(立地・物流))、企業風土、資金、組織、人材、システム、情報等が含まれる。
  • 外的要因 - Opportunity (機会)とThreat (脅威)
    一般的に企業の努力では変える事が難しい要因
    マクロ要因(経済、政治、法律、科学、技術革新、社会環境、文化、風俗等の変化による)と
    ミクロ要因(顧客、競合他社、協力会社等の変化による)がある。

SWOT分析により、外部環境の変化が企業にとって機会になるか脅威になるか、また、その変化に対して内部環境が強みになるか弱みになるかを分析し、企業の戦略を立てる。

バリューチェーン分析
バリューチェーン分析は、対象とする事業を「顧客に提供する価値」を起点に分析し、現状を可視化することから始まります。さらに、現状バリューチェーンの価値を高める施策を埋め込んで、事業そのものを再構築する活動のことを「バリューチェーンマネジメント」と呼びます。
バリューチェーンとは、製品やサービスを顧客に提供するという企業のビジネスモデル全体が、価値とコストを付加・蓄積する連鎖活動によって付加価値を最大化し、最終的に「価値」を生み出すという考え方です。企業の内部環境を分析するフレームワークとして、ポーターによって提唱されました。
競争地位の源泉、根本的な要素は、企業活動にあるとポーターは言っていますが、つまり、競争優位の源泉は、どんな活動をしているかで決まってくるということであり、企業の競争優位の源泉を捉えるフレームワークということができます。

バリューチェーンは、価値をつくる活動とマージンから成り立っています。そして価値をつくる活動は主活動と支援活動に分かれます。「主活動」は、購買物流(製品の原材料を外部から調達して貯蓄・配分する活動)、製造(原材料を使用して製品へと加工する活動)、出荷物流(完成品を顧客に届ける活動)、マーケティングと販売(広告、宣伝、チャネル構築などの顧客が製品を買いたくなる仕掛けをつくる活動)、サービス(修理などで製品価値を向上・維持させる活動)の五つがあります。
一方、「支援活動」は、調達活動(モノやサービスを社外から調達・購入する活動)、技術開発(設計・開発、製品モニターや市場テストなどの技術的活動)、人的資源管理(社員の人事、採用、教育、給与に関する活動)、全般管理(財務、法務、経理、情報サービスなどの活動)の四つに分かれます。すべての支援活動が個々の主活動をサポートしています。
主活動と支援活動のそれぞれは、ヒト・モノ・カネの資源を必要とし、当然、コストが発生します。総価値と価値活動の総コストの差が、マージンとなります。
このようなフレームを使用することで、競争優位をもたらすためにはどのような戦略をとればよいかを導くことができます。また、業界全体の利益構造や自社の強み・弱みの把握にも役立ちます。
企業が利益を生み出すためには、バリューチェーンの全体像を捉える必要があります。すなわち、主活動と支援活動のどの活動が価値を生み、どこが無駄なのかを見極め、コスト削減の可能性を考えることが必要です。

製品-市場 成長マトリクス 】(アンゾフ・マトリクス)
事業を拡大するうえで、今後の成長戦略の方向性を分析・評価するためのツール。企業戦略の分野で使われるほか、マーケティング領域においてもよく利用される。
製品と市場を軸にした2次元の表を作り、成長戦略を「市場浸透」「製品開発」「市場開拓」「多角化」の4つに分類する。

  • 市場浸透戦略
    現在の市場で、現在取り扱っている製品の販売を伸ばす成長戦略。例えば、既存顧客に広告や値引きなどを通じて、既存商品をより多く買ってもらえるようにする方法である。
  • 市場開拓戦略
    新しく顧客を開拓して、既存製品の販売を伸ばす成長戦略。例えば、国内向け商品を海外にも販売するという方法である。
  • 製品開発戦略
    既存の顧客層に向けて、新製品を開発して販売する成長戦略。製品のモデルチェンジやバージョンアップなどが該当する。
  • 多角化戦略
    新しい製品分野・市場分野に乗り出し、新しい事業を展開することで成長する戦略。例えば、航空会社が音楽流通ビジネスを展開するような方法である。

ファイブフォース分析
企業(もしくは産業)の競争戦略を考える前提として、外的環境(業界構造)を分析する際に使われるフレームワークのこと。ハーバード・ビジネススクールのマイケル・E・ポーター(Michael E. Porter)が自著『Competitive Strategy』(1980年)で示したもので、「新規参入」「敵対関係」「代替品」「買い手」「供給業者」の5つの視点で検討する。
業界を(1)業界内競争が激しいか否か、(2)新規参入障壁が高いか低いか、(3)代替品があるかないか、(4)消費者の力が強いか弱いか、(5)供給業者の力が強いか弱いか、という観点から分析するツール。
多くの場合、業界内の既存企業の立場から、その業界が魅力的か否かの考察を行う。例えば、(1)業界内競争が激しいということはライバルも多く、業界としての魅力は低いということ。また、(2)参入障壁が低ければ、その市場に同業者が多くなる可能性があり、これも業界としての魅力度を下げている。 (3)代替品の存在は、既存品・既存サービスの存在価値を弱める可能性があることを示す。(4)消費者の購買時の交渉力が強い場合は、企業側の立場が相対的に弱く、このことも業界の魅力度を下げることになる。同様の理由から、(5)原材料等を供給する側の力が強いのも、その業界の魅力度を下げる要因である。

  • 新規参入の脅威
    新規参入の脅威の大きさは、“参入障壁”の高さで決定される。参入障壁としては、「規模の経済性が発揮される業界」「製品の差別化がされている」「参入時投資が巨大」「仕入れ先の変更コスト(スイッチングコスト)が巨大」「流通チャネルの確保が困難」「既存企業に独自技術や仕入れ先、有利な立地、助成金、大きな経験曲線効果などがある」「政府の政策」「参入時の報復の大きさ」などが挙げられる。
  • 業界内の競合企業との敵対関係
    競合同士が激しく対立する業界では企業は超過利潤を得ることが難しくなり、業界の魅力は減ずる。企業の対立関係を決定する要因としては、「同業者の規模と数」「業界全体の成長性」「固定コスト、在庫コストの大きさ」「製品/サービス差別化の有無」「生産/供給の調整能力」「競合企業間の戦略的違いの有無」「戦略と成果の因果関係の大小」「撤退障壁の大小」などが挙げられる。
  • 代替品の脅威
    買い手のニーズを満たす別の製品──代替品の登場も企業にとっては脅威となる。代替品の価格性能比がよい場合、また代替品を提供する業界の利益率が高かったり、代替品の成長によって現在の業界の潜在利益が縮小される場合などは、脅威が大きいといえる。
  • 買い手の脅威
    製品やサービスを買ってくれる買い手も自社に大きな影響(脅威)を与える存在だ。影響の強さは、買い手の取引交渉力によって決定される。買い手の交渉力は、「買い手の数(集中度)」「買い手の購買全体に対する取引の比率」「製品/サービス差別化の有無」「買い手側の仕入れ先の変更コストの大きさ」「買い手の収益力」「製品/サービスの品質に対するこだわり」などに左右される。
  • 供給業者の脅威
    部材や商品の仕入れ先である供給業者(売り手)の脅威も、売り手の交渉力の大きさによって決定される。その決定要因は、「売り手の数(集中度)」「売り手にとって自社がどのくらい重要か」「製品/サービス品質に対する必要性」「仕入れ先の変更コストの大きさ」などである。

企業が属する業界の競争状態と収益構造を決定するキーファクターとして前述の5つを挙げ、その中で最も強い要因(脅威)が決め手となると指摘した。このフレームワークで業界(の内外)を分析することで、自社が置かれている業界の構造を理解し、競争の最重要要因を特定したうえで、「3つの基本戦略」(コスト・リーダーシップ戦略・差別化戦略・集中戦略)を踏まえて、競争戦略を策定することを提唱した。

  • コストリーダーシップ戦略
    同等の製品・サービスを競合他社より低コストで生産し、それを低価格で提供する。
    販売する量を拡大する戦略であり、また、同じ価格であれば高い利益率を得られる。
  • 差別化戦略
    製品やサービスの機能や品質、販売方法やプロモーション方法を他社より良いものとする戦略。
    顧客に対して、他社より優位性を得るための方法。
  • 集中化戦略(ニッチ戦略)
    特定の分野に集中的に経営資源を投入し、その分野で優位性を得るための戦略。
    シェアを確保し、その分野で主導権を握ることで利益を確保していく方法。

PPM 】( Product Portfolio Management :プロダクトポートフォリオマネジメント)
多種類の製品を生産・販売したり、複数の事業を行ったりしている企業が、戦略的観点から経営資源の配分が最も効率的・効果的となる製品・事業相互の組み合わせ(ポートフォリオ)を決定するための経営分析・管理手法である。ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の開発した製品および事業のポートフォリオのフレームワークのこと。BCGモデルともいう。
一般に、外部変数(市場や産業の成長性、魅力度)と内部変数(自社の優位性、競争力・潜在力)の2つの視点から、製品や事業ごとに収益性、成長性、キャッシュフローなどを評価し、その拡大、維持、縮小、撤退を決定する。

プロダクトポートフォリオマトリックス・・・横軸に市場占有率、縦軸に市場成長率をとり、そこに自社の製品をプロットしたポートフォリオ図によって、今後の戦略を立てる方法である.製品は、ポートフォリオ図によって、大きく下に示す 4 つのタイプに分類される。


問題児
(question mark, problem child)
競争激化→育成
花形製品
(star)
成長期待→維持
負け犬
(dogs)
停滞・衰退→撤退
金のなる木
(cash cow)
成熟分野・安定利益→収穫





  小← 相対的 マーケット・シェア →大
成長-シェア・マトリクス(BCGマトリクス)

  1. 負け犬 : 市場成長率と市場占有率が共に低く、現在及び将来とも力を入れるべき商品ではない.
  2. 問題児 : 市場成長率は高いが、市場占有率が低いため、力を注ぐことによって将来伸びる可能性がある.
  3. 花形 : 市場成長率と市場占有率が共に高く、現在及び将来とも力を入れるべき商品である.
  4. 金のなる木 : 市場占有率は高いが、市場成長率が低いため、現在の大きな収入源とはなっているが、将来的には難しい.

成長-シェア・マトリクスは製品・事業の成長性が資金需要(必要な投資額)を規定し、市場シェアが資金創出力(投資資金を生み出す力)を規定するという考え方に基づいている。従って、これを使ったBCGモデルが示す投資戦略は、「金のなる木」は大きな追加投資なしにキャッシュフローを生み出す事業、「花形製品」は市場の成長に合わせた投資を続けていくことが必要な事業、「問題児」は市場の成長に対して投資が不足している事業であり積極的な追加投資か、撤退が必要な事業、「負け犬」は将来性が低く基本的に撤退すべき事業と考え、「金のなる木」から得た収益を「問題児」に投入し、「花形製品」に育てるといった形が原則となる。

このモデルにもいくつか重大な弱点があることも知られている。
まず、事業間のシナジーが全く考慮されていない。各事業で設備やターゲット顧客が共有されていれば、たとえある事業がBCGモデルで「負け犬」となっていても、それは事業の実態を表してはいないかもしれない。事業間でブランドが共有されていれば、儲からなくても撤退せずに、宣伝として続けたほうが良い事業もある。
次に、このモデルはあくまで2つの切り口、成長性とシェアから出来ており、自社独自の特許化されたテクノロジーなどによるニッチ独占やライセンス収入などの複雑なビジネス要因が分析から漏れるという弱点がある。また、BCGマトリクスはあくまで収益にフォーカスしたモデルであるが、事業の存在価値は、例えば社会貢献の度合いや地域社会との関係性など、収益だけで測れるものばかりではないと考えられる。
さらに定義上の問題も無視できない。特にマーケット・シェアというのは、マーケットをどのように定義するかに大きく依存する。仮に鉛筆市場でナンバー・ワンとなっていたとしても、筆記用具市場としてマーケットを定義しなおせば、シャープペンシルやその他のペンなども含まれることで、シェアは極端に小さなものになるかもしれない。
そしてこのモデルに内包されている「シェアが上がれば収益も上がる」「成長市場ではお金の持ち出しが多くなる」「成熟市場では設備投資費用が必要ない」といった前提が成り立たないようなビジネスでは、BCGマトリクスは使用することが出来ないという点は、強調しておく必要がある。


c. 業界の位置による戦略

業界内の企業の地位は、リーダ、チャレンジャ、フォロワ、ニッチャの四つに分類できる。

  • リーダ企業
    市場においてナンバー1のシェアを誇る企業
  • チャレンジャ企業
    リーダーに次ぐシェアを保持し、リーダーに競争をしかける企業
  • ニッチャ企業
    小さいながらも特定の市場で、独自の地位を築いている企業
  • フォロワ企業
    リーダーやチャレンジャーの戦略を模倣して、市場での地位を維持している企業

a.リーダの戦略
市場リーダが採る戦略は、市場の規模を拡大することや市場でのシェアを維持することである。
また、市場リーダは市場の規模を拡大するだけではなく、競争する他社の攻撃に対して常に市場のシェアを維持しなければならない。

b.チャレンジャの戦略
リーダや他の競争している他社に攻撃をしかけ、シェアの増大を図る戦略を採る企業のことをいう。市場リーダに攻撃をしかける場合は、市場リーダの報復を最小限にとどめる戦略をとらなければならない。

c.フォロワの戦略
市場フォロワとは、市場を刺激せずにシェアの維持だけを考えて危険を冒さない戦略を採る企業である。市場フォロワが採る戦略は自らが成長するための道程を明確にし競争する他社から報復を招かないような戦略をおこなう必要がある。市場フォロワは市場リーダに攻撃をしかけずにリーダに追従する戦略を採る。

d.ニッチャの戦略
市場ニッチャとは、市場リーダが見過ごしてるか無視している市場の隙間を見つけ小規模で展開する企業のことである。市場ニッチャが採る戦略は、安全かつ利益の上がる市場においての隙間を見つけ顧客のニーズに応える戦略を採ることである。


  [ 例題 ] 
  1. 平成20年度春期 問71  成長マトリクス
  2. 平成22年度春期 問68  プロダクトポートフォリオマネジメント PPM
  3. 平成22年度秋期 問67  フォロワ


     

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