開発技術 - 12.システム開発技術 - 4.ソフトウェア方式設計・ソフトウェア詳細設計 - 12.モジュールの設計

Last Update : January 02 2021 16:00:31

     

a. 分割手法

●モジュール分割の技法 プログラムをモジュール単位に分割してこれを階層化することを「モジュールの分割」と言います。以下の方法があります。

  • データの流れに着目・・・STS分割、TR分割、共通機能分割
  • データ構造に着目・・・ジャクソン法、ワーニエ法、NSチャート

STS ( Source Transform Sink ) 分割
データの流れを「S(Source)源泉」「T(Transform)変換」「S(Sink)吸収」に分割して、モジュールの階層構造を設計する技法です。それぞれ、「入力モジュール」「処理モジュール」「出力モジュール」となります。
「最大抽象入力点」これ以降は入力データが発生しない区切りの場所。
「最大抽象出力点」こり以降は出力データが発生しない区切りの場所。

STS分割の手順

  1. DFDを参考に機能ごとに分割する
  2. 最大抽象点を見つけ出す
  3. STSに分割する
  4. モジュール構造へ変換する

TR ( Transaction :トランザクション)分割
機能の分割を行った際にデータの流れが分岐する場合に適用し、入力されたトランザクションにより、異なる処理を実行する場合に使用されます。
システムの処理単位ごとにモジュールを分割する。

TR分割の手順

  1. トランザクションを見極める
  2. 処理単位ごとに分割する
  3. モジュール構造へ変換する
  4. モジュール間のデータフローを作成する

共通機能分割
STS分割・TR分割で分割されたモジュール中に共通する機能を持ったモジュールがある時、これを共通モジュールとして独立させる方法。

ジャクソン法(JSP)
入出力のデータ構造に着目してモジュールの階層構造を導きます。「JSP木構造図」を使用します。これは、「基本」「連続」「選択」「繰返し」の構成要素からなります。
入出力データの構造に基づいてモジュール分割を行なう技法であり、データの流れに着目する構造化設計とは異なります。Michael Jackson氏によって提唱されました。 入出力データを構造化して上下関係などを作った後に、入力と出力データの構造の間に対応関係を作成します。そしてその対応を写像と考えてモジュールとします。データ構造の上下関係がそのままモジュールの上下関係となります。ここで、データ構造の記述にはJSP木構造図と呼ばれるものが用いられます。 きれいな対応関係がない場合は構造不一致と呼ばれ、コルーチンを用いて解決します。 ※コルーチンとは、主従関係がないプログラム単位である。コルーチンは自分の実行を中断して、ほかのコルーチンに制御を渡すことができる。これはサブルーチンにおけるリターンと似ているが、中断直後の処理から再開できる点(resume)に本質的な違いがある。サブルーチン実行中のコンテクスト(局所変数)はその終了とともに消え去るが、実行が中断されているコルーチンのコンテクストはそのまま存在しているからである。

ワーニエ法
入出力データの関係からモジュールの階層構造を導く技法です。「ワーニエ図」を使用します。
入力データを集合論によって分析し、データが「いつ,どこで,何回」使われるかを3 種類の制御構造(順次,選択,繰返し)の構造に整理する。
モジュールは次の3種類で構成される。

  • 順次
  • 選択
  • 繰り返し

ジャクソン法と異なり、ワーニエ法は入力データ構造のみからプログラム構造を決める。

NSチャート
矢印や線を使用せず、四角い枠の組み合わせで表現するため、構造化プログラミングの設計に適している。

HIPO
ソフトウェアの設計では、入出力データとの対応を図示したほうがわかりやすいということで考案された。HIPO は次の2つの図から成り立つ。
機能を階層的に表現した図式目次とデータの入力(Input) - 処理(Process) - 出力(Output)に着目したIPOダイアグラムからなる。
H 部分:各モジュールの階層構造を表現したもの。
IPO 部分:個々のモジュールについて入力・処理・出力を図式表現したもの。


図式目次


総括ダイアグラム


詳細ダイアグラム


b. 分割基準

モジュールの制御領域とは、モジュール同士が制御しあう領域のこと。上位から下位に制御が移る(呼び出す)とき、下位は上位の制御領域になる。
モジュールの影響領域とは、下位から上位への影響が及ぶ範囲
プログラムはモジュールに分割され、モジュールの階層構造で構成される。
全体の制御を行う最上位モジュールの下位に、いくつかの従属モジュールがある。

分割量、モジュール再分割、従属モジュール

c. モジュール仕様の作成
流れ図、決定表(デシジョンテーブル)、NS ( Nassi-Shneiderman :ナッシシュナイダマン)図、ジャクソン法、ワーニエ法

d. 分割の評価

分割の評価プログラムは、モジュール単位に分割しますが、良いモジュール分割とは、「独立性の高い分割」であり、「モジュール強度」と「モジュール結合度」で評価できます。

モジュール強度
モジュールがどれだけの機能を実現しているかを示す尺度で、強いほど独立性が高い。モジュール内の関連性の強さを示すもので、強いほど独立性が高くなる。

種類

モジュール内
の関連性

独立性

機能的強度

1つの機能を実現するためだけのモジュール
修正があってもほかに影響を及ぼさない













情報的強度

同一のデータを利用する複数の機能を持ち、複数の機能は個別に実行する

連絡的強度

複数の機能を持ち、同一のデータを使用し、順番に実行する機能をまとめたモジュール。機能間でデータの受け渡し(関連性)がある。

手順的強度

関連のある逐次的に実行する機能をまとめたモジュール。機能間の関連性は時間的強度より強い。

時間的強度

同一時間に実行する複数の機能を扱うモジュール
初期設定モジュールや終了設定モジュールのように、特定の時期に実行する機能をまとめたモジュール。 それぞれの機能にはお互いに関連性はない。

論理的強度

関連のある複数の機能を持つモジュール。モジュールが呼び出される時の引数(パラメータ)でモジュール内の複数の機能の1つの機能が選択・実行されるもの。

暗号的強度

複数の機能を持つがお互いに関連性のないモジュール。

  1. 機能的強度

  2. 情報的強度

  3. 連絡的強度

  4. 手順的強度

  5. 時間的強度

  6. 論理的強度

  7. 暗号的強度

モジュール結合度
モジュール同士の連結の度合いを示す尺度で、弱いほど独立性は高い。モジュール間の関連性の強さを示すもので、弱いほど独立性が高くなる。

種類

モジュール間
の関連性

独立性

データ結合

データのパラメータのみを明け渡す結合。相手モジュールをブラックボックスとして扱い、必要なデータだけを引数として渡す。













スタンプ結合

データの構造を決めるパラメータを渡す結合。構造体データ(レコード)を引数として相手モジュールに渡すが、呼ばれたモジュールではその一部分しか使用しない。

制御結合

他のモジュールの制御情報のパラメータを渡す結合。モジュールを制御する要素(機能コードや制御スイッチ)を引数として、相手モジュールに渡し、モジュール内の機能や実行を制御する関係にある (論理的強度のモジュールとそのモジュールに機能コードを渡すモジュールとの関係)。

外部結合

共通領域(グローバル領域)に定義されたデータを参照するモジュール。かつ必要なデータだけを外部宣言し共有する。 (機能的には関連性はない)。

共通結合

共通領域(グローバル領域)に定義されたデータ構造を参照するモジュール。

内容結合

アドレスやポインタなどにより他のモジュール内部のデータを直接参照している結合

※「パラメータ」とは、あるモジュールから別のモジュールを参照する際に必要となる変数のことを言います。

※「グローバル領域(大域変数)」とは、プログラム全体に対して定義される変数で、プログラムのどこからでも参照・更新することができる。

  1. データ結合

  2. スタンプ結合

  3. 制御結合

  4. 外部結合

  5. 共通結合

  6. 内容結合


  [ 例題 ] 
  1. 平成29年度秋期 問48  モジュール結合度
  2. 平成28年度春期 問47  モジュール結合度
  3. 平成23年度秋期 問45  モジュール強度
  4. 平成20年度春期 問44  モジュール結合度
  5. 平成19年度春期 問43  モジュール強度
  6. 平成18年度春期 問41  モジュールの独立性
  7. 平成17年度秋期 問41  モジュール強度
  8. 平成16年度秋期 問51  モジュール結合度
  9. 平成14年度秋期 問47  モジュール結合度
  10. 平成13年度秋期 問47  HIPO


     

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