基礎理論 - 2.アルゴリズムとプログラミング - 4.プログラム言語 - 6.表計算ソフト

Last Update : January 02 2021 16:00:18

     

a. 表計算ソフトとは

数値データの集計や分析などを行うソフトウェアの総称である。スプレッドシートともいう。
表計算ソフトでは、集計用紙のように縦横に並んだマス目(セル)に文字や数値を入力して、そのデータを元に数値計算や集計、グラフ作成などの作業を行うことができる。また、Excelでは、データを蓄積して活用するための機能も充実しているため、データベースを扱うためのソフトウェアとして用いることも可能である。
数値計算を行うには、演算子や関数(組み込みの数式)などを用いて計算式を立てる。計算式内の数値は、定数値を入力するだけでなく、他のセルに入力された数値を参照することもできる。そのため、参照元のデータが変更されると、そのセルも自動的に変更される。関数には、合計したり平均したりするといった基本的なものをはじめ、文字列や日時を扱うものや、条件式によって値を返すものも用意されている。


b. ワークシート

1.ワークシート
(1)列と行とで構成される升目の作業領域をワークシートという。ワークシートの大きさは256列、10,000行とする。

(2)ワークシートの列と行のそれぞれの位置は、列番号と行番号で表す。列番号は、最左端列の列番号をAとし、A,B、…、Z,AA,AB、…、AZ,BA,BB、…、BZ、…、IU、町と表す。行番号は、最上端行の行番号を1とし、1,2、…、10000と表す。

(3)複数のワークシートを利用することができる。このとき、各ワークシートには一意のワークシート名を付けて、他のワークシートと区別する


2.セルとセル範囲
(1)ワークシートを構成する各升をセルという。その位置は列番号と行番号で表し、それをセル番地という。
[例]列A行1にあるセルのセル番地は、A1と表す。

(2)ワークシート内のある長方形の領域に含まれる全てのセルの集まりを扱う場合、長方形の左上端と右下端のセル番地及び“~”を用いて、“左上端のセル番地~右下端のセル番地”と表す。これを、セル範囲という。
[例]左上端のセル番地がA1で、右下端のセル番地がB3のセル範囲は、A1~B3と表す。

(3)他のワークシートのセル番地又はセル範囲を指定する場合には、ワークシート名と“!”を用い、それぞれ“ワークシート名!セル番地”又は“ワークシート名!セル範囲”と表す。
〔例]ワークシート“シート1”のセル範囲B5~G1Oを、別のワークシートから指定する場合には、シート1!B5~G1Oと表す。



c. 式

1.式
(1)セルは値をもち、その値はセル番地によって参照できる。値には、数値、文字列、論理値及び空値がある。

(2)文字列は一重引用符“’”で囲って表す。
〔例]文字列“A”、“BC”は、それぞれ'A'、'BC'と表す。

(3)論理値の真をtrue、偽をfalseと表す。

(4)空値をnullと表し、空値をもつセルを空白セルという。セルの初期状態は、空白セルとする。

(5)セルには、式を入力することができる。セルは、式を評価した結果の値をもつ。

(6)式は,定数、セル番地、演算子、括弧及び関数から構成される。定数は、数値、文字列、論理値又は空値を表す表記とする。式中のセル番地は、その番地のセルの値を参照する。

(7)式には、算術式、文字式及び論理式がある。評価の結果が数値となる式を算術式、文字列となる式を文字式、論理値となる式を論理式という。

(8)セルに式を入力すると、式は直ちに評価される。式が参照するセルの値が変化したときには、直ちに、適切に再評価される。

2.清算子
(1)単項演算子は、正符号“+”及び負符号“-”とする。

(2)算術演算子は、加算“+”、減算“-”、乗算“*”、除算“/”及びべき乗“^”とする。

(3)比較演算子は、より大きい“>”、より小さい“<”、以上“≧”、以下“≦”、等しい“=”及び等しくない“≠”とする。

(4)括弧は丸括弧“(”及び“)”を使う。

(5)式中に複数の演算及び括弧があるときの計算の順序は、次表の優先順位に従う。

演算の種類演算子優先順位
括弧()
べき乗演算
単項演算+、-:
乗除演算*、/:
加減演算+、-
比較演算>、<、≧、≦、=、≠

3.セルの複写
(1)セルの値又は式を、他のセルに複写することができる。

(2)セルを複写する場合で、複写元のセル中にセル番地を含む式が入力されているとき、複写元と複写先のセル番地の差を維持するように、式中のセル番地を変化させるセルの参照方法を相対参照という。この場合、複写先のセルとの列番号の差及び行番号の差を、複写元のセルに入力された式中の各セル番地に加算した式が、複写先のセルに入る。
[例]セルA6に式A1+5が入力されているとき、このセルをセルB8に複写すると、セルB8には式B3+5が入る。

(3)セルを複写する場合で、複写元のセル中にセル番地を含む式が入力されているとき、そのセル番地の列番号と行番号の両方又は片方を変化させないセルの参照方法を絶対参照という。絶対参照を適用する列番号と行番号の両方又は片方の直前には“$”を付ける。
[例]セルB1に式$A$1+$舳十A駒が入力されているとき、このセルをセルC4に複写すると、セルC4には式$A$1+$A5+B$5が入る。

(4)セルを複写する場合で、複写元のセル中に、他のワークシートを参照する式が入力されているとき、その参照するワークシートのワークシート名は複写先でも変わらない。
[例]ワークシート‘‘シート2’’のセルA6に式シート1!A1が入力されているとき、このセルをワークシート“シート3”のセルB8に複写すると、セルB8には式シート11B3が入る。


d. 関数
  • 合計(セル範囲)
    セル範囲に含まれる数値の合計を返す。
    [例]合計(A1~B5)は、セル範囲A1~B5に含まれる数値の合計を返す。

  • 平均(セル範囲)
    セル範囲に含まれる数値の平均を返す。

  • 標本標準偏差(セル範囲)
    セル範囲に含まれる数値を標本として計算した標準偏差を返す。

  • 母標準偏差(セル範囲)
    セル範囲に含まれる数値を母集団として計算した標準偏差を返す。

  • 最大(セル範囲)
    セル範囲に含まれる数値の最大値を返す。

  • 最小(セル鮪囲)
    セル範囲に含まれる数値の最小値を返す。

  • IF(論理式,式1,式2)
    論理式の値がtrueのとき式1の値を、falseのとき式2の値を返す。
    [例]IF(B3>A4,'北海道',C4)は、セルB3の値がセルA4の値より大きいとき文字列“北海道”を、それ以外のときセルC4の値を返す。

  • 個数(セル範囲)
    セル範囲に含まれるセルのうち、空白セルでないセルの個数を返す。

  • 条件付個数(セル範囲,検索条件の記述)
    セル範囲に含まれるセルのうち、検索条件の記述で指定された条件を満たすセルの個数を返す。検索条件の記述は比較演算子と式の組で記述し、セル範囲に含まれる各セルと式の値を、指定した比較演算子によって評価する。
    〔例1]条件付個数(H5~L9,>A1)は、セル範囲H5~L9のセルのうち、セルA1の値より大きな値をもつセルの個数を返す。
    [例2]条件付個数(H5~L9,='A4')は、セル範囲H5~L9のセルのうち、文字列“A4”をもつセルの個数を返す。

  • 整数部(算術式)
    算術式の値以下で最大の整数を返す。
    [例1]整数部(3.9)は、3を返す。
    [例2]整数部(-3.9)は、-4を返す。

  • 剰余(算術式1,算術式2)
    算術式1の値を被除数、算術式2の値を除数として除算を行ったときの剰余を返す。関数"剰余"と"整数部"は、剰余(x,y)=x-y*整数部(x/y)という関係を満たす。
    〔例1〕剰余(10,3)は、1を返す。
    〔例2〕剰余(-10,3)は、2を返す。

  • 平方根(算術式)
    算術式の値の非負の平方根を返す。算術式の値は、非負の数値でなければならない。

  • 論理積(論理式1,論理式2,…)
    論理式1、諭理式2、…の値が全てtrueのとき、trueを返す。それ以外のときfalseを返す。

  • 諭理和(論理式1,論理式2,…)
    論理式1、論理式2、…の値のうち、少なくとも一つがtrueのとき、trueを返す。それ以外のときfalseを返す。

  • 否定(諭理式)
    論理式の値がtrueのときfalseを、falseのときtrueを返す。

  • 切上げ(算術式,桁位置)
    算術式の値を指定した桁位置で、関数“切上げ”は切り上げた値を返す。ここで、桁位置は小数第1位の桁をOとし、右方向を正として数えたときの位置とする。
    [例1〕切上げ(-314.159,2)は、一314.16を返す。
    [例2]切上げ(314.159,-2)は、400を返す。
    [例3]切上げ(314.159,O)は、315を返す。

  • 四捨五入(算術式,桁位置)
    算術式の値を指定した桁位置で、関数“四捨五入”は四捨五入した値を返す。ここで、桁位置は小数第1位の桁をOとし、右方向を正として数えたときの位置とする。

  • 切捨て(算術式,桁位置)
    算術式の値を指定した桁位置で、関数“切捨て”は切り捨てた値を返す。ここで、桁位置は小数第1位の桁をOとし、右方向を正として数えたときの位置とする。

  • 結合(式1,式2,…)
    式1、式2、…のそれぞれの値を文字列として扱い、それらを引数の順につないでできる一つの文字列を返す。
    [例]結合('北海道','九州',123,456)は、文字列"北海道九州123456"を返す。

  • 順位(算術式,セル範囲1),順序の指定)
    セル範囲の中での算術式の値の順位を、順序の指定がOの場合は昇順で、1の場合は降順で数えて、その順位を返す。ここで、セル範囲の中に同じ値がある場合、それらを同順とし、次の順位は同順の個数だけ加算した順位とする。

  • 乱数()
    O以上1未満の一様乱数(実数値)を返す。

  • 表引き(セル範囲、行の位置、列の位置)
    セル範囲の左上端から行と列をそれぞれ1,2,…と数え、セル範囲に含まれる行の位置と列の位置で指定した場所にあるセルの値を返す。
    [例]表引き(A3~H11,2,5)は、セルE4の値を返す。

  • 垂直照合(式,セル範囲,列の位置,検索の指定)
    セル範囲の左端列を上から下に走査し、検索の指定によって指定される条件を満たすセルが現れる最初の行を探す。その行に対して、セル範囲の左端列から列を1,2,…と数え、セル範囲に含まれる列の位置で指定した列にあるセルの値を返す。
    ・検索の指定がOの場合の条件:式の値と一致する値を検索する。
    ・検索の指定が1の場合の条件:式の値以下の最大値を検索する。このとき、左端列は上から順に昇順に整列されている必要がある。
    [例]垂直照合(15,A2~E10,5,O)は、セル範囲の左端列をセルA2,A3,…,A1Oと探す、このとき、セルA6で15を最初に見つけたとすると、左端列Aから数えて5列目の列E中で、セルA6と同じ行にあるセルE6の値を返す。

  • 水平照合(式,セル範囲,行の位置,検索の指定)
    セル範囲の上端行を左から右に走査し、検索の指定によって指定される条件を満たすセルが現れる最初の列を探す。その列に対して、セル範囲の上端行から行を1,2,…と数え、セル範囲に含まれる行の位置で指定した行にあるセルの値を返す。
    ・検索の指定がOの場合の条件:式の値と一致する値を検索する。
    ・検索の指定が1の場合の条件:式の値以下の最大値を検索する。このとき。上端行は左から順に昇順に整列されている必要がある。
    [例]水平照合(15,A2~G6,5,1)は、セル範囲の上端行をセルA2,B2,…,G2と探す。このとき、15以下の最大値をセルD2で最初に見つけたとすると、上端行2から数えて5行目の行6中で、セルD2と同じ列にあるセルD6の値を返す。

  • 照合検索(式、検索のセル範囲、抽出のセル範囲)
    1行又は1列を対象とする同じ大きさの検索のセル範囲と抽出のセル範囲に対して、検索のセル範囲を左端又は上端から走査し、式の値と一致する最初のセルを探す。見つかったセルの検索のセル範囲の中での位置と、抽出のセル範囲の中での位置が同じセルの値を返す。
    [例]照合検索(15,A1~A8,C6~C13)は。セル範囲A1~A8をセルA1,A2,…と探すこのとき、セルA5で15を最初に見つけたとすると、セル範囲C6~C13の上端から数えて5番目のセルC1Oの値を返す。

  • 照合一致(式,セル範囲、検索の指定)
    1行又は1列を対象とするセル範囲に対して、セル範囲の左端又は上端から走査し、検索の指定によって指定される条件を満たす最初のセルを探す。見つかったセルの位置を、セル範囲の左端又は上端から1,2、…と数えた値とし、その値を返す。
    ・検索の指定が0の場合の条件:式の値と一致する値を検索する。
    ・検索の指定が1の場合の条件:式の値以下の最大値を検索する。このとき、セル範囲は左端又は上端から順に昇順に整列されている必要がある。
    ・検索の指定が-1の場合の条件:式の値以上の最小値を検索する。このとき、セル範囲は左端又は上端から順に降順に整列されている必要がある。
    [例]照合一致(15,B2~B12,-1)は、セル範囲B2~B12をセルB2,B3,…と探すこのとき、15以上の最小値をセルB9で最初に見つけたとすると、セルB2から数えた値8を返す。

  • 条件付合計(検索のセル範囲,検索条件の記述,合計のセル範囲)
    行数及び列数が共に同じ検索のセル範囲と合計のセル範囲に対して、検索と合計を行う。検索のセル範囲に含まれるセルのうち、検索条件の記述で指定される条件を満たすセルを全て探す。検索条件の記述を満たした各セルについての左上端からの位置と、合計のセル範囲中で同じ位置にある各セルの値を合計して返す。検索条件の記述は比較演算子と式の組で記述し、検索のセル範囲に含まれる各セルと式の値を、指定した比較演算子によって評価する。
    [例1〕条件付合計(A1~B8,>E1,C2~D9)は、検索のセル範囲であるA1~B8のうち。セルE1の値より大きな値をもつ全てのセルを探す。このとき、セルA2,B4,B7が見つかったとすると、合計のセル範囲であるC2~D9の左上端からの位置が同じであるセルC3,D5,D8の値を合計して返す。
    [例2]条件付合計(A1~B8,=160,C2~D9)は、検索のセル範囲であるA1~B8のうち、160と一致する値をもつ全てのセルを探す。このとき、セルA2,B4,B7が見つかったとすると、合計のセル範囲であるC2~D9の左上端からの位置が同じであるセルC3.D5,D8の値を合計して返す。


e. マクロ

  [ 例題 ] 
  1. 平成17年度春期 問39  表計算
  2. 平成16年度秋期 問46  表計算
  3. 平成13年度秋期 問44  表計算
  4. 平成12年度秋期 問47  表計算
  5. 平成12年度秋期 問48  表計算


     

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